【本編完結】黒死の蝶の唯一留まる花   作:SUN'S

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新しい夜明けを 破

修復フラスコという肉体の損傷を回復させる培養液の中に漬かっていたお坊っちゃまのお世話を出来ると思っていたのに、マスター・バタフライ様の切り出した話題によってお坊っちゃまは瞬時に回復してしまった。

 

「ウ~ン、流石はひいひいじいちゃん、蝶・エレガントで素敵な衣装だ」

 

銀成市の駅構内を出て、皆様の奇異の視線をお坊っちゃまは恥じる事はせず、堂々と鏡面に見えるほど綺麗に磨き上げられた壁と向き合っている。

 

私は真っ白な無貌の仮面(フェイスレスマスク)に蝶々の絵を描いてお坊っちゃまの隣に佇んでいるだけで、特にポージングを取ったりすることはありません。

 

今回は武藤カズキと津村斗貴子の二人の錬金の戦士に宣戦布告を申し出るだけ。お坊っちゃまは一度自分を倒した武藤カズキに対抗心、あるいは期待を抱いているのは薄々私も感じており、ちょっぴり彼に妬いています。

 

「やあ、こっちこっち!」

 

「お久しぶりです。武藤君、津村さん」

 

優雅にお坊っちゃまが手を振る真横で、私はメイド服のスカートを摘まみ、ゆっくりとお辞儀をして人混みに紛れていた二人に挨拶を送る。

 

「なっ、なんて格好をしているんだ!?」

 

「待って、斗貴子さん!アレはお洒落だよ!」

 

「ホウ。この良さが分かるとは流石だ」

 

二人の意気投合する言葉に思わず「お坊っちゃま、少しお洒落を履き違えているのでは?」と呟いた瞬間、津村斗貴子も同じように「カズキ、君はお洒落を履き違えているぞ」と呟いていた。

 

しかし、マスクはお洒落だと思います。

 

「此処だと少し騒々しい。どこかに入ろうか」

 

「では、近隣に出来たばかりの有名なウマカバーガーに行きましょう」

 

「遊び感覚なのか、お前達は…!」

 

私の提案に頭を抱える津村斗貴子は生真面目すぎる性格のようですね。もっとお坊っちゃまや武藤カズキの様に柔軟な思考を心掛けるべきですね。

 

「ハンバーガーセットAとコーヒーを二つ。賛、オススメを選ぶか?」

 

「私はカフェラテとハンバーガーセットSサイズを頂けると嬉しいです。他のお客様の物を見るに、思っていたよりサイズは大きい様ですし。津村さんと武藤君はどうしますか?」

 

「えっ、じゃあ、ハンバーガーセットBとコーラで。斗貴子さんは?」

 

「わ、私も頼むのか!?……ムッ、カフェラテとハンバーガーセットAをSサイズで頼む」

 

私の問い掛けに戸惑っていたけれど。

 

直ぐに受け入れてくれた二人の度量に感謝を送りつつ、テイクアウトではなく店内飲食を選んだお坊っちゃまと一緒にソファに向かうとした瞬間、あの日の夜に見掛けた全身を隠すコートを身につけた人が、静かに自動ドアの前に佇んでいた。

 

どうやらテイクアウトになるようですね。

 

 

 

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