「ム~ン。君達は本当にしつこいね!」
月牙を構えるムーンフェイスの登場に警戒する武藤カズキと津村斗貴子、倫さん達の後ろで腕組みしているお坊っちゃまの隣でムーンフェイスを見上げます。
やはりマスター・バタフライ様と行動を共にしている黄色くて綺麗な三日月状の顔をした私の知っているムーンフェイス様ではなく、妖しく夜空を照らす灰色の三日月状の顔をしたLXE離反組のムーンフェイスだ。
「ムーンフェイス、お前の計画を阻止する!」
その宣言と共にソウヤ君の起動した武装錬金は剣状の槍であり、黒い核鉄の影響を受けて変質していた武藤カズキのサンライトハートに形状は酷似しているのに、二人とも気付いていない。
鋭いのに、鈍いですね。
「私と君達は本当に今回が初対面の筈なんだけど。まあいいさ、この月牙の武装錬金『サテライト
「来るぞ!」
六人が駆け出していく最中も楽しそうに笑っているお坊っちゃまに小首を傾げながら「お坊っちゃまは行かないのですか?」と問う。
「いや、今更ながら離反組のムーンフェイスが此処に存在しているという事実に違和感を感じたんだが、賛は気になったことはあるか?」
「気になることでしたらあります。あのムーンフェイスは無限増殖の特性を活かしているというのに目立った攻撃は長身による蹴りばかり、本来のムーンフェイス様は統率を行って確実に相手を倒します」
「ふむ、続けろ」
「あのムーンフェイスは攻撃を手当たり次第に行っているだけで、まるで時間稼ぎのために一人が消えれば一人を増やす事を繰り返し、永遠に終わらない戦いを仕掛けているように見えます」
そう言って私は津村斗貴子達の戦闘を見守る。
蛮竜を使えば一振りまで粉々に粉砕できますが、こんな狭い場所で使えばお坊っちゃま達を生き埋めにしてしまう可能性もあるため使えません。
「糸色賛、君は戦わないのかい?」
「お坊っちゃまの熟考の邪魔はお止め下さい」
ぬるりと私達の近くにやって来たムーンフェイスの頭部を二重の極みで殴り砕き、自己再生しようとする彼の章印を蛮竜で切り裂く。
黄色くて綺麗なムーンフェイス様だったら、こんな簡単には勝てません。やはり、アナザータイプというのは本家本元の相手には少しだけ劣りますね。
そもそも理知的ではありませんし。
「賛、一番奥の奴は何故動かない」
「おそらくアナザータイプの本体なのでは?」
「アイツを倒せば終わりか」
ニヤリと笑ったお坊っちゃまの視線に気付いたのから、ムーンフェイスは逃げるように、29人のムーンフェイスを残して何処かに行ってしまった。