ゆっくりとお坊っちゃまの隣に移動し、津村斗貴子も武藤カズキの隣に移動する。やはり、この人の隣が一番落ち着いて、安心できます。
「ム~ン。面倒臭い上に全員で乗り込んで来るなんて酷いね。私が一体何をしたっていうんだい?ちょっと実験しているだけじゃないか」
まるで自分は被害者だと訴えるように話すムーンフェイスにソウヤ君達の鋭い視線が突き刺さり、わざとふざけた道化師の真似事をしていたムーンフェイスの笑みが変えて、三日月が満月に変わると同時に赤銅色に染まる。
「うおっ、皆既月食した!?」
「カズキ、ふざけている場合か!あの威圧感と殺意の重さ、アイツは戦士長と戦うときに本気を出していなかったということだ!」
武藤カズキと津村斗貴子の二人の言葉に納得し、片手を突き上げて蛮竜を引き寄せようとしたその時、私の間合いに一呼吸の隙もなく入り込んできたムーンフェイスのパンチが腹部にめり込み、血反吐を吐いて地面を削りながら私は弾き飛ばされ、鉄製の壁に激突していた。
「ゴフッ…ゲホッ、ゴホッ!…」
全く見えなかった。
それどころか反応すら出来なかった。
「───さて、改めて私の武装錬金の紹介をしよう。私の月牙の武装錬金『サテライト
「その答えはイエスだ」
ムーンフェイスの出題した問いかけに真っ先に答えるお坊っちゃまに内臓を傷付け、ゼヒュッ…ゼヒュッ…と呼吸の乱れた身体の負傷部位を確かめつつ、核鉄の治癒能力を借りるために素肌に直接押し当てる。
その間も会話は続いている。
おそらく、お坊っちゃまの目的は傷ついた私がある程度まで回復して、蛮竜を振るえるようになること。しかし、まさかムーンフェイスにこの様な奥の手があったとは想定外です。
「俺の賛に気付かれずに間合いに踏み込めるなどホムンクルスになったところで不可能に近しく、油断していなかったアイツの隙を狙えるとなれば、それぐらい出来て貰わなければ困る」
「ム~ン。パピヨン君、君の答えは正解だ!」
にっこりと赤銅色の満月が嗤う。
それと同時に、私の身体がひしゃげていた壁の中から突き出てきた無数の手に掴まれ、壁の中に引きずり込まれ、赤銅色の満月の笑みに見下ろされる。
「ハッ、ハハハッ、蝶・最悪ですね」
「「「一番強いのは君だからね!」」」
「槍よ、来い…!」
その言葉と共に繰り出されるパンチの嵐をガードしながらパピヨンパークのモニタールームに置いていた蛮竜を呼び寄せ、大鉾の穂先で身体を守る。
長い、戦いになりそうですね。