東京都みかど市。
私の両親と祖父母の暮らす土地であり、お爺様とお父様は光覇明宗大日派恩施山覇風寺「芙玄院」という、分かりやすく言ってしまうと蒼月一家ととら様の生活しているお寺のお坊様です。
かつて白面の者と戦い抜いた功績と、お爺様の精神の安定を兼ねて、お婆様は東京に引っ越し、こちらでお母様を産み、お父様とご結婚したそうです。
まあ、幼少の頃に蝶野家に私は移りましたけど。
「お久し振りです。お婆様」
「あら、本当に久しぶりね。賛、随分と羽振り良く暴れてみたいで私の所にも貴女の噂話は届いているわよ。爺さんにも挨拶してきなさい。で、貴女が来たって事は糸色家を継ぐ気になったの?」
「いいえ、今回は交際相手と未来から来た娘を両親に紹介しようと思いまして。ああ、変態さんみたいな見た目ですけど、この人は蝶野攻爵さんです」
「……蝶々仮面の妖怪の出没は聞いていたけど。まさか孫娘がホムンクルスと結婚することになるとはね。まあ、曾孫を見せに来てくれたのは感謝するよ」
そう言うと齢七十を迎えているとは思えないほど正しく背筋を伸ばして本堂に向かっていくお婆様の後ろ姿を見送りつつ、カチコチになっている倫さんを見る。
「倫さん、どうしたんですか?さっきまで会えることを楽しみにしていたのに」
「あ、あんな凛々しいお婆ちゃんだったの?私の知っているお婆ちゃんって、薙刀は強いし、槍も強いし、なんかホムンクルスをブチのめしている修羅みたいなお婆ちゃんなんだけど」
「なんだ、賛と同じじゃないか」
「お坊っちゃま、それはどういう意味ですか?」
倫さんの頭を撫でて慰めるお坊っちゃまの言葉に小首を傾げつつ、シャランと錫杖の金具を鳴らして法力を高めて突撃してきたお爺様とお父様の攻撃を片足と片手で防ぐ。
久しぶりに帰省したというのに、何故私は襲われているのでしょうか?と疑問を抱くも直ぐにお爺様の大きな手が頭の上に乗り、直ぐにまたお父様の手に変わる。
「腕は鈍ってないな。流石は俺の孫だ」
「お義父さん、俺の娘なので頭を撫でないで」
「倫さん、いずれ貴女もこうなります」
「2秒後の未来じゃんね!?」
お父様とお爺様に曾孫の可愛さを全力でアピールするチャンスを与えて、私はお母様の居るであろう本堂にお坊っちゃまと一緒に向かいます。
「……あら、随分と遅かったのね」
まだ四十を迎えたばかりのお母様の髪は毛先の半分が白く染まり、何処か人を見下したように嗤う笑顔も健在で安心します。
「お母様、お久し振りです」
「やあ、久しぶりだな」
「お前は帰って良い。賛、此方に来なさい」
「いえ、皆様にあいさあぁぁあぁ……」
ブワァッ…!と一瞬にして伸びた髪の毛に身体を包まれ、私はお母様の腕の中に収まり、スリスリと頬っぺたを撫でられ、額に額を当てられ、全ての愛情を込めたお母様の視線を一身に受け止める。