「私の娘に近づくな」
「賛は俺のものだが?」
「幼子だった頃のお前はまだ良い。だが、今の変態に変態した様な貴様に私の大事な娘を預けるなど出来るか。大体、私はずっと離別など反対していたのだ」
「そんな理不尽な理由なぞ認めない」
私の全身を艶やかで美しい黒髪と白髪の混ざり合った混色の髪の毛で包み込んで無理やり膝枕を強制し、私の頭を優しく撫で続けるお母様を見上げる。
見た目こそ他人を見下す女帝に見えますが、お母様は家族愛に溢れた優しく素敵な女性なんです。
そうお坊っちゃまに伝えたいのですが、口許にも髪の毛を巻き付けて横隔膜を利用した二重の極みを封じ、しっかりと私の反撃手段を潰している。
流石はお母様です。
「爆破してやろうか」
「ぷはっ、お坊っちゃま、ダメですよ」
「賛、変態と話しちゃダメよ。貴女の暴れている噂を聴く度、母はとても心配していたんです。特に蝶々仮面の妖怪とつるんでいると聞いたとき、私はとらを差し向けようかと何度考えたことか」
「お母様、私とお坊っちゃまは健全です。確かに見た目は網タイツの様に見えますが、アレはオシャレな衣服です。ほら、よく見てください」
私の言葉に渋々とお坊っちゃまに視線を向けたお母様に全身を見せつけるようにポージングを取り、自分の潔白を証明するお坊っちゃまに苦笑してしまう。
ゆっくりと髪の毛を緩めてくれたお母様に安堵し、上半身を起こして正座したままお母様に向き直り、三つ指を突いて深々と頭を下げる。
「改めて、お久し振りです。お母様」
「えぇ、お久し振りね。こうして戻ってきてくれた事だけで母は嬉しいわ。でも学生結婚した上に子供までいるなんて私は心配です」
「いえ、まだお坊っちゃまとは結婚していませんし。娘も未来から来ているだけなので、まだ私が倫さんを産んだわけではありません。あと糸色の名前を継ぐつもりがないことをお伝えに参りました」
「……そう、貴女も糸色を継がないのね」
貴女も、ということはおそらく奇は事前に伝えているのでしょう。あの子は蛮竜を使える継承権を得る戦士には向いていませんし、性格も穏和ですからね。
「武藤に継がせるか?」
「あの子は錬金戦団になるでしょう。今でこそ奈落という共通の相手を倒すために共闘しています。が、やはり彼らを信用する事はない」
お母様の言い分は分かります。
幼い頃の私もよく錬金戦団を名乗る人達に連れ去られそうになっていましたから、糸色本家の倉に眠る資料は世界中の組織が狙っている。