私の家系は女系というわけではないのですが、基本的に世界規模の大事に巻き込まれるのは女の子だったりして、斯く言うお母様も巻き込まれているそうですが、何に巻き込まれたのかは教えてくれません。
やはり昭和も大変だったのでしょう。
「ママ、お婆ちゃんが怖いわ」
「目付きが悪いだけで優しい人ですよ。ほら、今も倫さんの頭を撫でたくてエアナデナデをしているじゃないですか、ちょうど貴女の頭の位置ですよ」
「……それはそれで怖いわ」
ジッとお母様は倫さんの事を見つめて、本当に虚空を撫でている。正座しても足を崩してもちょうど彼女の頭を優しく撫でることの出来る位置です。
確かに人を見下していると勘違いされてしまいそうな目付きの悪さと不遜な雰囲気も相俟って、大妖怪なのかと思える出で立ちです。
「倫、来なさい」
「は、はひっ!」
「こんなに小さいのに戦うなんて、貴女はとても優しくて良い子よ。ただ、私やお母様、賛のようにダメな男に引っ掛かってはいけないわ」
「ハハハ、言われてますよ」
「乾いた笑い声だな。どうした?」
よしよしと倫さんの頭を撫でて、彼女の全身を髪の毛で包み込んでいくお母様を見つめる。お母様は高水準の霊能者であり光覇明宗と糸色本家を繋ぐ立場の人───。
しかし、まあ、お母様は愛が重いのです。
「私も撫でたいから貸しなさい」
「お母様、私の孫だからダメよ」
「ハハハ、蛮竜」
「え?あっ」
私の側に控えていた蛮竜がお婆様の呼び掛けに応えるように飛び出し、彼女の手に収まる。
「怒るわよ、お母様」
「撫でるから貸しな、私の曾孫だ」
二人の威圧に挟まれている倫さんは虚ろな目に変わり、もう何もかも諦めたような表情を浮かべ、私に似た顔を残して髪の毛に沈んでいる。
仕方無いですね、未来からの娘です。
今回は助けてあげましょう。
「お二人とも倫さんが可哀想でああぁぁ……」
そう思って近寄った瞬間、私もお母様の髪の毛の中に取り込まれてしまった。蛮竜を使いたくてもお婆様の手元にあり、何も出来ない。
「娘も孫も私が育てるのよ」
「(倫さん、暫くこのままです)」
「(ママも捕まったのね)」
ぼんやりと髪の毛に包まれながらお坊っちゃまに視線を送るとお父様やお爺様、とら様に絡まれていました。とら様は人間の姿で、確か中国の秘境で人間に変わったと言っていた気もします。
「賛、倫、貴女は私が育ててあげる」
「もうすぐ成人するので大丈夫でございます」
「せい、じん?」
……お母様の中では私は子供のままなのですね。