私と奇は流お爺様の書斎でにっこりと微笑んでいる祖父を正座して見つめる。お母様やお婆様ほど怒っている印象は無いのですが、やはりお爺様も私達の未来を反対するのだろうかと不安になってしまう。
「お前達も堅苦しい話は嫌いだろうし。率直に言っておくが、ああいう男は面倒臭いぞ。それでも二人はアイツらと添い遂げるつもりか?」
「当然でございます」
「当たり前です」
「そうか。ならお爺ちゃんはお前らを応援する」
そう言うとお爺様は書斎の棚を漁り始め、二つの数珠を取り出した。勾玉と綺麗な石を使って作られたソレに奇は「もしかして、お爺様からのプレゼントなの?」と嬉しそうに訊ねるとお爺様は苦笑した。
「コイツは言霊の念珠っていう代物でな。これを相手に着けてやるとあら不思議、悪いことしたら止めることが出来るアイテムだ」
「火渡さんを自由に?」
「奇?」
ゴクリと唾液を飲んでお爺様の差し出す「言霊の念珠」という道具を受け取ろうとする妹の姿に戦々恐々してしまう。愛しているからといって相手を縛り付けるのは、とても悪いことですよ?
「ホウ。面白いものがあるな」
「あ、お坊っちゃ……え?」
いつの間にかお爺様の書斎に入ってきていたお坊っちゃまに驚き、勝手に部屋に入るのは悪いことですと注意しようとした瞬間、ジャラリと私の首に言霊の念珠が何の躊躇もなく掛けられていた。
「さて、何を命令しようか」
ニヤニヤと私を見下ろすお坊っちゃまにビクリと身体が跳ねた瞬間、お爺様の錫杖がお坊っちゃまの顔を弾き上げ、奇のワクワクした視線が私を見つめる。
「アホか。俺が居るんだぞ」
「乗り越えてやろう」
窓を突き破って出ていった二人を見送り、私と奇は書斎に取り残される。
「……奇、これを外してくれますか?」
「お、お姉様って支配されたい欲求とかある?」
「あるわけないでしょう」
ウチの妹は何を言っているのでしょうかと小首を傾げ、仕方なくお母様のところに行こうとしたら、直ぐに奇は私の念珠を外してくれました。
首飾りよりも私はお坊っちゃまのプレゼントしてくれた、この蝶のブローチのほうがとても大切ですからお爺様の自由に出来るというものは必要無いのです。
「二人ともお爺様の部屋で何を?」
「お婆様、この言霊の念珠を知っていますか?」
「知っているわよ。私が無茶をするお爺様を繋ぎ止めるために作ったものです。もっとも今のあの人には不必要なものだから外しているけど」
そう言うとお婆様は外でお坊っちゃまと戦っている流お爺様の事を優しげな表情で見つめています。私もお坊っちゃまとああなれるように頑張らないとですね。