倫さんと巧さんの二人の孫娘の事を嬉しそうに撫でているお母様は二人の身体を髪の毛に包み込み、脱出することが出来ないように手足の関節も優しく締め付けているのが遠くから見えます。
「賛と奇も寄宿舎や寮生として家を出てしまったから、こうして孫娘達の頭を撫でるのは仕方無いことよ?貴女達も撫でられたいなら此方に来なさい」
「お姉様、お先にどうぞですわ」
「お断り致します。私は昼食を麻子おば様と真由子おば様と一緒に作る約束をしていますので、奇がお母様の髪の毛に包み込まれて来なさい」
トンと奇の背中を押してお母様の髪の毛の射程距離に差し出した瞬間、奇の身体は髪の毛の中に包み込まれていき、私は一礼して本堂を前を通り過ぎ、キッチンで料理の準備を始めているお二人に話しかける。
「遅くなりました」
「良いわよ、また掴まってたんでしょ?」
「やっぱり愛情が深いねえ」
お母様はきっと愛の重さで地球を潰せます。
「おお、此処に居たのか家来!」
「とら様、今日は人なのですね」
「うしおのヤツが五月蝿く言うから仕方なくな。流のヤツも妖怪が妖怪退治の依頼を受けるのは変だから人間になっとけって池に投げ込みやがって」
そう言ってプンスコと怒るとら様。
普段の勇ましく凛々しい妖怪の姿ではなく、人間の姿に変わっているのは中国の秘境「呪泉郷」の一つに、真由子おば様と結婚するために飛び込んだそうです。
やはり、とら様も愛ある妖怪ですね。
「賛、躾け直しておいたぞ」
「お坊っちゃま!?」
三日月状のエネルギーを身体に受けて、一歩も動けずにいるお坊っちゃまに駆け寄って朏の陣を砕こうにも私は法力関連を習う前に家を出てしまったため、どうやって対処すれば良いのか全く分からない。
「お、お爺様、これはどうすれば?」
「僕が教えるよ。賛、両手に力を込めて、ゆっくりと朏の輪郭をなぞり、法力を一点に集めるんだ」
お母様の髪の毛に連れ込まれていたお父様がいつの間にか私の背後に立っており、ゆっくりと手の甲に手を重ねるように法力を流してくれ。
どうやって使えば良いのかを体感してくれます。
「……ホウ。法力を砕く法力か」
「相手が法力使いなら使えるようになっておけば安心できるし、それに賛の性格と戦い方を考えるに無駄な小細工を教えるより手っ取り早だろう?」
「ったく。ウチの娘婿は優しすぎるぜ。その変態はお前の娘を嫁にするために来ていることを忘れたのか?」
「お義父さん、だから外したんです。大事な娘を誑かすゴミクズは父として滅する!!」
カッ!と両目を見開いて、お父様がお坊っちゃまを追い掛けまわす。……ひょっとして、火渡戦士長にも同じことをするつもりなんですか?