お坊っちゃまとデートをするために銀成市の駅周辺を歩いているとき、蝶・センスの良いファッション店を見つけてしまったお坊っちゃまと共に店内を巡る。
「賛、この服はお前に似合うぞ」
「こ、これでございますか?」
にっこりと笑っているお坊っちゃまが差し出してきた衣服に戸惑いつつ、私はいつものように受け取ってしまう。ですが、本当に私に似合うのでしょうか。
着替えの更衣室を指差すお坊っちゃま。少し気恥ずかしさと不安を抱きながら更衣室に入り、カーテンをピッタリと閉じて、お坊っちゃまのお勧めする衣服を改めて見つめる。
ピッタリと肌に張り付くバイオレットカラーの揚羽蝶を刻んだボディ・コンシャス。いわゆるボディコンと呼ばれる種類の肉体美を強調する服です。
少々過激に思える服を着るため、メイド服を脱ぎ、ボディ・コンシャスに着替える。……あれ?これは胸がないと生地が落ちてしまうのでは?
「…………お坊っちゃま、私には着れません」
「ムッ。何故だ?」
「胸が、圧倒的に足りません…!」
「そうか。残念だ、お前の恥ずかしがる所を見たくて選んでみたがそれは盲点だった。───ならば俺自らが選んだ蝶ハイセンスな物を選んでやる!」
そう言うと、いきなりカーテンの中に手を差し込んできたお坊っちゃまに驚愕し、思わず叫びそうになりますが、なんとか口許を押さえて耐える。
「蝶の刺繍が多い……成る程、センスが良いと仰っていたのはこういうことですか。しかし、次々と着替えを送り込むのはお止め下さい!」
自分の着てほしい破廉恥な服ばかり送り込んでくるお坊っちゃまの手をペチペチと叩き、メイド服を着直してカーテンを開け、お坊っちゃまを見上げる。
「なんだ。いつもの格好じゃないか」
「お坊っちゃま、私はお坊っちゃまにお仕えすることを喜びとしています。ですが、こういう破廉恥な服を着せようとするのは、その、恥ずかしいです」
「俺はお前の恥じる姿で楽しめる」
「……攻爵さんは意地悪です」
ぷいっと顔を逸らして文句を言います。
本当ならメイドにあるまじき言葉遣いや行為ですが、今はデートの最中ですのでこうして彼に文句を言っても良いのです。尤も私もお坊っちゃまも本気で言い争っている訳ではありません。
「よし、次に向かうとするか」
「次はエッチなのは禁止です」
「……安心しろ、普通の食事だ」
ほんの一瞬だけ顔を歪めて残念がっていたのを私は見逃していませんが、お坊っちゃまと楽しくデート出来るのであれば頑張ります。しかし、成人を向かえていないのにエッチなのはいけないことです。