「わしらに奈落の思惑を問うか」
「白童子、余り余計な事を言うな」
「分かっている。さて、奈落がお前を狙っている理由を問うていたな。それに答えは二つか三つはあるが、一番の要因はお前の容姿だ」
「……意味が分かりません」
あの大妖怪の奈落が容姿が良いからと私の事を付け狙っている?それこそ笑えないジョークです。確かに、自意識過剰ではありますが、私はお母様の娘ですからそれはもう自分の容姿には自信はあります。
しかし、全てはお坊っちゃまのためです。
お化粧のやり方も姿勢、歩行の美しさ、所作に至るまで全てはお坊っちゃまのお嫁さんに相応しいレディになるために磨き続けている私の努力です。
それを容姿だけで狙うなどゴミクズの所業だ。
「遥か昔の戦国時代だ。おそらくお前の祖先と奈落は出会った。───しかし、出会っただけならば何も問題はなかったが、ある事で歯車は狂い始めたのだ」
「……貴方は、まるで奈落がそのご先祖様に恋をしてしまったように話しますね」
「概ねその通りだとも」
だんだんと嫌な予感がしてきますね。
奈落が私を攻撃せずに身体を縛り付けて押さえ込もうとしているのは察してはいましたけど。まさか、そのご先祖様に似ているというだけで私を狙うとは───。
「五十年近く前の大戦時も兄上の身体を乗っ取り、背丈は違うが血族を狙っていた。それは、かつて鬼蜘蛛だった頃のわしは桔梗に固執していた奈落の記憶を持っている故に分かる。そして、ついぞ手に入れる事の出来なかった桔梗よりも生きた女に意思が移ろうのは必然だった」
「シンプルにキモい……コホン、気色悪いです」
「だろうな。わしと魍魎丸は貴様を敵として認識しているが奈落の意思はお前を捕えよと囁いている。羽を捥げば翔べぬ蝶のように、その強さを振るえぬようにして飼い殺すつもりなのだろうな」
「更に気持ち悪い事を言いますね?!」
「白童子、奈落が怒っているぞ。余りベラベラと喋り続けては戦国時代のときのように奈落の謀略によって我らは二度目の死を迎えることになる」
私と白童子の会話を見守っていた魍魎丸の言葉を聞き、私は白童子と魍魎丸の二人にスカートの裾を摘まんで一礼し、二人を無視してお坊っちゃま達を追いかけることにしました。
要するに奈落は二度目の恋を拗らせて、その女の人の血筋で容姿も似ている私をお嫁さんにしたくて、こんなふざけた騒動を起こしているということですか。
奈落って、馬鹿なんでしょうか?
私の心も身体もお坊っちゃまのものですよ!