【本編完結】黒死の蝶の唯一留まる花   作:SUN'S

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白い少女 序

先日の破廉恥な事件後。

 

私とお坊っちゃまの関係は元通りになりましたけど。武藤カズキと中村剛太の二人は本気で怒った津村斗貴子によって成敗されました。

 

そして、お母様の含牙戴角を白童子に投げ渡した当の本人たる中村剛太は自分の仕出かした事をスッパリと忘れているらしく、溜め息を吐いて怒る気力も無いほどに困惑している始末です。

 

含牙戴角。

 

戦国時代に生まれた妖器物(バケモノきぶつ)の一振りであり、お母様が現役時代に髪の毛と共に愛用していた少なくとも獣の槍や蛮竜に匹敵し得る業物───。

 

「……本家の禁書を読むべきでしょうか」

 

「禁書?」

 

ポツリと呟いてしまった言葉に病院の一室で漫画を読んでいる武藤カズキが反応し、その隣のベッドには未だに「許して下さい、センパイ」と魘されている中村剛太もおり、私の隣には林檎の皮を果物ナイフで剥く津村斗貴子も此方に視線を向けてきた。

 

「えぇ、高祖母様が世界各地を巡ったときに綴ったという糸色流の奥義の上を行く兵法書です。其処の中村君が持ち出していた武具倉の地下室に封印しているという話はお婆様に聞いたことがあります」

 

「それ、オレも爺ちゃんに聞いたかも」

 

やはり、武藤カズキも話を聞いている。

 

「ああ、そういえば奈落の目的分かりましたよ」

 

「なに?何故、あのときに教えなかった」

 

「原因の男子は挙手しなさい」

 

津村斗貴子が問い詰めようとしてくるので、そう病室にいる三人に向かって話し掛けると素直に三人は挙手し、にっこりと津村斗貴子に微笑んであげる。

 

分かります、忘れたいですよね。

 

でも、忘れちゃダメです。

 

「で、アイツの目的は何なんだ?」

 

「私です」

 

「……すまない、なんだって?」

 

「奈落の目的は戦国時代に生きていた糸色家の女の人に瓜二つな私だそうです。しっかりと本人に聞きましたから事実ですよ」

 

「俺の賛を奪うつもりなのか?」

 

お坊っちゃまの低すぎる声にゾワゾワとしてしまう。津村斗貴子は「戦国時代に拗らせすぎて、その子孫に恋する変態なのか。気持ち悪いな」と呟きつつ、私の肩に手を置いて苦笑した。

 

「……何か言って下さい」

 

「いや、私に言えることはない」

 

「まあ、そうですよね。しかし、こうなると問題なのは私だけではなく、奇やまひろさんも狙われる可能性も強いあるわけですからね」

 

「まひろは渡さん!お兄ちゃんは許さないぞ!」

 

「俺の賛も変態ストーカーなんぞに渡すものか!」

 

そう言って病室で暴れまわる二人を眺めながらウサギさんにカットした林檎を津村斗貴子の口許に差し出すと、シャクリと瑞々しい音が聴こえてきた。

 

今は落ち着いて対処法を考えましょう。

 

 

 

 

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