本当に鍛えていない普通の女の子のように弱くなってしまった私の身体を元に戻すためには、あの白い少女に吸い取られて奪われた私自身の魂を取り戻さなければいけないのですが。
彼女には奈落の気配も臭いもしなかった。
見つけるのは難しいでしょうね。もしくは、もうすでに私の偽者を作り上げて、奈落は自分の傍に侍らせているという可能性も捨てきれない。
「ひゃあっ!?」
「ムッ。やはり気付いていなかったのか」
むぎゅっ、とメイド服のスカート越しに私のお尻を撫でられたことにビックリして後ろに振り返って薙刀を構えて突き付けるものの、穂先を掴まれ、あっさりと私は薙刀をお坊っちゃまに奪い取られてしまう。
「最近、破廉恥な悪戯が多いですよっ」
ペチペチと未だに私のお尻を触ろうとするお坊っちゃまの手を叩きつつ、そろそろ本当に身の危険を感じてしまい、津村斗貴子の部屋に逃げようかと真剣に悩んでしまう程にお坊っちゃまは破廉恥です。
「俺が信用できないのか?」
「し、信用はしています。でも最近のお坊っちゃまは信頼を裏切るようにエッチな悪戯ばかりで本当に怖いときもあるんですよ?」
「……お前が魅力的なのが悪い」
責任転嫁の言い訳になっていませんよ?とそう私はお坊っちゃまに苦言を申しながら、早く半身が帰ってくることを願うばかりです。
全く、女の子を何だと思っているんですか。
「……ッ、何か来ます」
「何も感じない……いや、確かに気配が増えたか」
私を壁際まで追いやってきたお坊っちゃまも気配を感知し、周囲を探ろうと顔を上げた瞬間、彼の顔に白手袋を嵌めた拳がぶつかり、ベッドの向こう側まで弾き飛ばされていく。
「フ、フフフ、攻爵さんったら浮気ですか?」
白い髪の私が壁を壊して現れる。
チラリと私を一瞥して、二度見する私自身に戸惑いつつベッドの向こう側から戻ってきたお坊っちゃまに同時に駆け寄って私は左腕に、彼女は右腕に抱きつく。
「「
「……ホウ。これは中々に……」
「わ、渡しません!」
「渡さないです!!」
私と私はお互いを牽制するように言葉を言い放って、お坊っちゃまの腕にしがみつき、必死に自分の方に引き寄せ合い、私達は一歩も退かずに対抗する。
「お坊っちゃま、捨てないでっ」
「攻爵さん、捨てないで下さいっ」
「おのれ、奈落めッ!!なんという最高の、もといなんという恐ろしく素晴らしい精神攻撃を仕掛けてくるんだ!クッ、俺にはどちらも選べないッッ!!!」
そう言ってお坊っちゃまは私達を抱き締める。