私と別れてしまった白髪の私もまたお坊っちゃまを敬愛しているため、ビジネスホテルにやって来た理由もお坊っちゃまにお仕えして尽くすためである。
身体こそ奈落の切り離した人間のものだそうですが、その言葉を信用して良いのかは不安ですけど。本当に、私の居場所を奪われそうで不安です。
「賛、此方に来てくれ」
「「はい。……呼ばれたのは私です」」
「どっちも呼んだから来てくれ」
「畏まりました。お坊っちゃま」
「左様でございますか。攻爵さん」
お互いに張り合うようにお坊っちゃまの両隣を取り合い、お坊っちゃまの腕に身体を押し付け、ビジネスホテルの部屋を退出して銀成高校の寄宿舎に向かって一緒に歩きつつ、お坊っちゃまを不安げに見上げる。
「お坊っちゃま、どうして寄宿舎へ?」
「フッ、武藤に自慢するためだ!」
「……攻爵さんはぶれないですね」
「……もう争う必要も無くなりそうです」
少し溜め息を吐いてお坊っちゃまの腕に抱きつくのではなく彼の手を握り締めて、お坊っちゃまを挟んで三人で一緒に歩き出す。
「ニアデスハピネスで翔んでいくか。二人とも俺の首に手を回しておけ」
「「(腕にお尻を乗せるのか。俵抱きされるのか。そのどちらかで対応は変わりそうですね。……あ、もう一人の私と同じことを考えている気がします)」」
そうお互いの考えを何となく理解し、お坊っちゃまの逞しく筋肉質な腕に抱き締められる。
お尻を肘関節の二の腕と前腕の間程に乗せた瞬間、お坊っちゃまの蝶の羽が弾け、素早くも私達の事を気遣ってくれた飛行で何の心配もなく寄宿舎、武藤カズキと津村斗貴子のいる広間の開けられた窓に突撃していく。
「昨日ぶりだな、武藤!」
「蝶野!?賛さんも……あれ?」
「フッ、俺の嫁が増えたのだ!」
「「よ、嫁だなんて気が早すぎます…♪︎」」
「白髪の糸色賛と黒髪の糸色賛だと?!」
余りにも有り得ない光景に驚く津村斗貴子に現状の区別をつけるために、分かりやすく私と私の違いを教えるために話し掛ける。
「津村さん、私は秋葉賛です」
「私は糸色賛です。───認識的には奈落の分身に奪われた魂を受肉さられたほうは私ですが、偽者ではありませんからね?」
「な、なんと言えば良いのか……私はお前達を元に戻るように手伝えばいいのか?」
「「そうなります。ですが、
そう言って私達はお互いを見つめる。
例え奈落に魂を分かたれようとお坊っちゃまを愛する心まで奪い取ることは出来ません。それに秋葉賛ではなく糸色賛の方を狙ったのは失敗ですよ、私はとても負けず嫌いですからね。