【本編完結】黒死の蝶の唯一留まる花   作:SUN'S

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本家に赴き 序

長野県信州市。

 

お坊っちゃまにほんの少しだけお休みする許可を戴いて、糸色本家の建つ二千坪を越える巨大な土地と小さなお城にも見える日本家屋に向かって、私と私と武藤カズキは一緒に歩いている。

 

普段のメイド服や私服ではなく糸巻きの家紋を背負った着物を着用している。如何に親族と云えど家紋を背負わず、自由に訪問できるほど糸色本家は優しい場所ではありませんからね。

 

「賛様、カズキ様、お久しゅう御座います」

 

「うん。夏休みに来れなくてごめんね」

 

「爺や、お久し振りでございます」

 

「元気そうで何よりです」

 

現在の当主の庭園を手入れしていた爺やにお辞儀をして挨拶をしようとした瞬間、私と私に飛んできた苦無を弾き落とす。わざと見えるように撃ってきた辺り、私の危機を知っているのでしょう。

 

そう訝しげに苦無を拾って爺やに手渡す。

 

「いやはや、流石は賛様です。カズキ様は少し後ろに倒れ込むとは怠けていたのですかな?」

 

「大丈夫!刺さっても斬れてもいないよ!」

 

「ホッホッホッ、それはよう御座いました」

 

にっこりと微笑んだ爺やは私達を先導するように歩き出し、私達と武藤カズキは静かに彼の後ろを着いていくと季節はずれの桜を楽しんでいる人が見えた。

 

「やあ、来たね。賛、カズキ」

 

まるで来るのが分かっていた様に呟き、ゆっくりと此方に視線を向けた高祖父・相楽左之助と糸色姿のどちらにも似た青年───糸色境(いとしき さかい)は穏やかな笑顔を私達に向ける。

 

彼こそ糸色本家の現当主たる御方です。

 

少なくとも現時点どころかおそらく未来の如何なる次代の当主であろうとも糸色境を越える当主は生まれることはないでしょう。

 

糸色と相楽、秋葉という御三家の最高傑作が私ならば彼は糸色家の歴史で最も人間を辞めている人、ハッキリと言えば生まれる時代を間違えた人種です。

 

「境様、お久し振りでございます」

 

「境兄さん、久しぶり」

 

「境様、元気そうで良かったです」

 

「うん、僕は元気だよ。それにしても賛は本当に二人に別れてしまったんだね、カズキも随分と面白いものを身体に住まわせている。次代の当主候補は面白いことばかりで楽しそうだ」

 

私としては元に戻ってお坊っちゃまを独り占めしたいのですが、蛮竜を呼び寄せる強さはもう一人の私に傾いているため、そう簡単に物事は進んでいないです。

 

「目的はこの禁書だろうけど。残念ながら今は僕が読んでいるんだ、貸して欲しかったら退屈しのぎに僕と遊んでくれるかい?」

 

「分かった。何をする、境兄さん」

 

「勿論、本気のバトルだ」

 

まあ、知っていましたよ。

 

 

 




【概要用語解説】

本作の単語や転生者、その親族を解説します。

糸色境(いとしき さかい)

本名「糸色境」。繋ぎ読みは「絶境(ぜっきょう)
年齢は二十代半ば。身長176cm。
「さよなら絶望先生」および「るろうに剣心」に登場する「相楽景」と「相楽左之助」の間に生誕した二人目の子供の血を受け継ぎ、生誕した現地人。神酒の加護を癒やす力に変換できるため、親戚の小さな子供の怪我をよく治したりしている。


ただ、不運にも「相楽景」の持つ「前世の記憶の保持」の副次効果───「未来予測」を発現する等、面倒事を惹き付ける体質も隔世遺伝してしまった稀有な存在だが、その肉体レベルは人間の範疇を飛び越え、圧倒的な文武を兼ね備えた規格外の史上最強の生き物である。


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