【本編完結】黒死の蝶の唯一留まる花   作:SUN'S

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寄宿舎の攻防 破

「こんばんは、津村さん」

 

「…糸色ッ…賛か!…」

 

「その怨敵を見据える視線に御応えして、此方も本気の勝負を仕掛けさせて頂きます。お坊っちゃま、宜しいでしょうか?」

 

「ああ、好きにしろ。お目当ての核鉄は幸運な事に俺の足元に転がってきたしな」

 

そう言うとお坊っちゃまは蝶センスの良いエレガントな一張羅の股間部位に核鉄を仕舞い、私と津村斗貴子では絶対に手を差し込めない場所に収納する。

 

「き、貴様、それはッ!!」

 

「……コホン。津村さん、お相手は私です」

 

「……わ、分かっている!」

 

チラチラと核鉄の隠し場所を見ては顔色を赤くしたり青くしたりする津村斗貴子。そのお気持ちは大変お分かりすることは出来ますが────。

 

「油断大敵でございますよッ!」

 

「なッ、チィッ…!バルキリースカートッ!!」

 

最短距離を駆け抜ける突進にて間合いを詰め、津村斗貴子の振るう、それこそ四肢の如く自由自在に扱える処刑鎌(デスサイズ)の一つに右拳を昇拳として繰り出し、関節部を粉々に殴り砕き、左拳を彼女の腹部にめり込ませ、二重の極みを撃つ。

 

しかし、私が処刑鎌の四本の内の一つを砕いた瞬間、津村斗貴子の意思によって駆動する三本の処刑鎌が同時に斬撃を放ち、私の肩口や脇腹を切り裂き、スッパリと皮膚と肉を斬り、赤々とした鮮血が舞う。

 

「浅いか!ン゛ッ、ガフッ!?」

 

「───おや、お忘れですか?私の拳は万物必壊、掠り傷さえも致命傷に成り得る絶対的な攻撃力を持つ。如何に高速駆動する処刑鎌(デスサイズ)であろうと貴女に当ててしまえば一撃で戦況は覆るのです」

 

血反吐を吐いて膝を突く彼女に宣言し、脇腹と肩口の傷を圧迫して出血を抑える。お坊っちゃまに捧げる、この身体に傷を付けるのは申し訳ありませんが、津村斗貴子を倒すには無傷は到底不可能と判断します。

 

「私を見下ろすな、ホムンクルス…!」

 

そう言って立ち上がる津村斗貴子の言葉に小首を傾げる。この場にいるホムンクルスはお坊っちゃまだけ、私は普通の人間でございますよ?

 

いえ、答えるのは無粋ですね。

 

「貴様はッ、私が倒す!」

 

「その挑発はお受け致します!」

 

おそらく津村斗貴子の考えは二本を囮にした頭部を狙った斬撃の筈、その攻撃よりも素早く二度目の二重の極みを彼女に撃てば私の勝利です!

 

「貴様の臓物をブチ撒けろッ!!」

 

「津村さん、お覚悟をッ!!」

 

左右同時に処刑鎌を一本ずつ胴体を切り裂くために放たれた斬撃を振り下ろしの肘打ちで処刑鎌を外側に弾き、頭部を狙った最後の一本に左右の拳を引き戻す勢さいせいで、そのまま手の甲で受け止める。

 

「神谷活心流、刃止め…!」

 

「チッ、ここで真剣白刃取りかッ!だが、私がお前を倒すことに代わりはない!!」

 

「此方も終わりではありません!」

 

砕けていた最初の一本を手に取り、振るおうとする津村斗貴子に蹴りで二重の極みを放とうとしたその時、私達の攻撃はお互いの身体を擦り付け、私達をお互いを睨み付けるように間合いを開く。

 

ふと、春にしては濃い霧に気付く。

 

「お坊っちゃま、これは?」

 

「さあね。でも、お前達の戦いを妨害したいヤツがいるのは事実だろう」

 

「……左様でございますか。津村さん、次は妨害を受けない場所で決着を付けましょう。その時は私も武器を使用し、お相手をします」

 

「……チッ。次は確実に貴様を倒す」

 

ゆっくりと津村斗貴子に向かってスカートの裾を摘まんで一礼し、お坊っちゃまと共に濃霧の中へと向かう。これがマスター・バタフライ様率いるLXEによる妨害か、あるいは離反組の工作かは知りませんけど。

 

私達の真剣勝負を邪魔するのは少し無粋な行為です。次は必ず彼女と決着を付けるためにも蛮竜を呼び起こす必要がありますね。

 

「……漸く霧が晴れたか」

 

「寄宿舎から随分と離れましたね。方向と距離感も狂わせるとは恐ろしい能力です」

 

「ふむ。しかし、ちょうど良い立地で晴れたな」

 

お坊っちゃまの言葉にお応えしながら住宅街を抜けた駅付近で会話していたその時、何かを思い付いた顔に変わるお坊っちゃまの呟きに首を傾げる。

 

ちょうど良い立地ですか?

 

「賛、彼処に行くぞ」

 

「あそこ?」

 

なにやらキラキラした看板のホテルですね。

 

───ですが、確かに傷を負った身体を清めて手当てをするためには休息は必要な事です。私の身を案じてくれるお坊っちゃまの優しさに嬉しさを覚えつつ、私はお坊っちゃまと一緒にホテルへと向かって歩き出す。

 

何故、お坊っちゃまは笑っているのでしょうか?

 

 

 

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