「さあ、掛かっておいで」
ゆっくりと桜の花びらの舞う場所に立っている糸色境に武装錬金を使用しようとする武藤カズキにスカートの中から取り出した鎌槍を差し出す。
「ありがとう。行くぞ、境兄さん!」
「最初の相手はカズキか……五手だな」
そう呟くと同時に駆け出した武藤カズキの直突きを穂先に左手の手のひらを添えるように往なし、彼の腹部に掌底を叩き込み、小さく「先ずは一手…」と左手の人差し指を見せてカウントを開始する。
また、始まった。
高祖母様の持っていたという「未来視」を隔世遺伝して誕生した「未来予測」だ。筋肉の動き、呼吸の音、視線、空気の流れ、その全てのパーツを掛け合わせて同時並行して二百を越える未来を予知し、予感し、予測して、糸色境は相手の動きを封殺する。
「クソッ、やっぱり強い!!」
「カズキも強くなっているよ。子供の頃にいつも僕と遊んでくれていたのも君を含めて数人だけ、前当主だった賛のお婆様も僕と引き分けるのが精一杯だったんだ」
緩やかに前進を始めた糸色境を迎え撃つため、私達も薙刀と十文字槍を構えて、左右から同時に攻撃を仕掛け、その隙を武藤カズキに頼もうとした───。
しかし、私達の横薙ぎと切り上げの攻撃が重なる瞬間、槍と薙刀の穂先を踏み砕かれ、無造作に突き出された身体が大の字を描く様な裏拳を顔に受け、私達は何の力も込められていない動作で吹き飛ばされる。
「二手。カズキ、無言で上を取ったのは褒めるけど。女の子を囮にするなんて悪い子だ」
「それはオレも悪いと思っている!!」
「だろうね。カズキはそういうヤツだ」
降り下ろしの一撃が糸色境の肩口に当たる。
そう思っていたのに、武藤カズキの握る鎌槍の柄を掴んでいる。それも片手で糸色境は男子高校生の身体の体重が乗ったものをです。
「ガハッ!?」
「三手。四手と五手は二人に別れた賛達を一撃で倒すけど、降参するかい?それとも最初から再開するなら僕は構わないけど」
地面に叩き落とされた武藤カズキの顎を蹴りあげて吹き飛ばし、私達は冷や汗を流す身体を起こして武器を構えた刹那、私の向かい側にいた白髪の私が足払いを受けて身体を浮かせ、お腹に打ち下ろしの拳を受けて吐血する光景を目撃した次の瞬間、私は顎先を人差し指で弾かれ、カクンと力が抜けたところにボディブローを受ける。
男女平等に遊ぶときは全力で叩き潰す。
「四手と五手だ。昔は三人とも一手で沈んでいたけど、随分と成長した様だね。うん、楽しめたから禁書は一時的に貸してあげよう」
そして、底抜けにお人好し過ぎる人です。