「…………」
ゆっくりと身体の感覚を確かめるようにストレッチを行いつつ、禁書に書かれていた技を使って糸色境に攻撃を仕掛け、僅かに彼の身体を退かせる武藤カズキの成長速度に感心しながら関節を緩やかに解す。
やはり同年代の親戚の中で最も優れたポテンシャルを秘めているのは武藤カズキですね。まだまだ負けるつもりはありませんが、あの成長速度は素晴らしい。
「覇極流、千峰塵っ!」
刹那、彼の握る槍の穂先は槍衾の如く重厚な壁を作り出し、糸色境の頬や着物を僅かに切り裂き、本家にやって来て初めて武藤カズキは糸色境に一撃を与えた。
「うん、流石はカズキだ。でも僕の予測を上回るために無理やり身体を酷使するのはダメだよ、君達は変態妖怪を倒すために鍛えているんだ」
「うっ、ごめん。だけど、奈落を倒すには無茶をしてでも強くならなくちゃいけないんだ」
「人間は無茶して強くなる事は無いよ。強くなったとしても本当の強さじゃない。ある人が言っていたよ。戦いはヘソでする物だってね」
高祖母様の言っていた格言の一つですね。
どれだけ戦いが怖くてもお腹に力を込めて、何にも負けない強い意志で道を踏み外さず、真っ直ぐどこまでも歩んでいけるように一歩一歩を大事にする。
とても良い言葉です。
「賛も準備は終わったかな?」
「えぇ、終わりました。蛮竜」
私の突き出した右手に久し振りに感じる重みに笑みを浮かべてしまう。やはり、他の薙刀や槍よりも私には蛮竜が最も馴染みますね。
「此処からは本気で参ります」
「OK。掛かっておいで」
「はい!」
右の下段から左斜めに振り上げるように蛮竜を振るい、手首を返して刀身を叩き落とす。が、糸色境は両手で蛮竜の刀身を合掌するように挟み込み、私の身体ごと蛮竜を振り上げ、投げ飛ばす。
「そこで二重の極みだろ?」
「────ッ、流石ですね」
蹴りによる二重の極みを二重の極みで相殺され、ビリビリと骨子に響く衝撃に競り負けた事に唇を噛み、武藤カズキの近くに着地し、ゆっくりと構える。
「武藤君、大丈夫ですか?」
「うん、
グッと親指を突き立てる武藤カズキも武装錬金「サンライトハート」を起動し、糸色境に向かって構える。お婆様は引き分けたそうですが、私達は勝って奈落を倒すために全力を彼を倒したい。
「二人は本来の武器を使うわけか。じゃあ、此方も抜かねば無作法だろうね」
そう言うと糸色境は刀身の無い刀の柄を取り出す。
その刀の柄に私は見覚えがある。
「戦国時代、とある馬鹿な侍がいた。人の身でありながら妖怪の力を欲しいと望み、血を吸う妖怪の骨を妖怪の刀鍛冶に持ち込み、二振りの妖刀を作った」
初代様の傍にいた御方の持っていた妖刀だ。