「賛、これが奈落は何処に隠れているのかとLXEや錬金戦団、光覇明宗、そして糸色本家が日本各地を探し回っているのに見付からない理由だ。奈落はずっとお前の事を近くで監視していたんだよ」
「紛い物の分際で儂を引きずり出したつもりか。もはや貴様等に糸色賛を預けておく必要性が無くなったから出てきたまでだ」
お坊っちゃまの導き出した答えに驚く私を見据えて、まるで私がお坊っちゃまに囚われているかのように言葉を紡ぎ、緩やかに虫の脚みたいな触手を動かし、廃工場の屋上に現れた奈落を見つめる。
奈落は自分の考えこそ正解だと思っている。
いいえ、自分の思うことこそ世界の真実だと信じているから、戦国時代のお婆様、お婆様、私に代を重ねる事に愛を育み、私達と共に生き、心を通わす戦国時代のお爺様、お爺様、そしてお坊っちゃまに嫉妬心を抱いている。
「き、気色悪い…」
「なッ、何を言う。儂はお前を想って」
「気持ち悪い。何なんですか、桔梗様を愛していた癖に高祖母様に鞍替えして、それがダメなら似ているお婆様、それでもダメだったから私を狙うなんて」
「お前の想い焦がれる賛もこう言っているぞ。無駄な抵抗を止めて、さっさと地獄に帰れ!」
その怒声と共に黒色火薬が吹き荒れ、奈落の身体を爆破し、蠍や蜘蛛、百足が混同したような彼の身体は粉々に砕ける。が、瞬時に再生し、飛び散った肉片が私とお坊っちゃまを取り巻き、鞭のようにしなる。
「蛮竜っ、結界を!」
蛮竜は球体状の結界を作り出すも奈落の振るう触手に弾かれ、お坊っちゃまに抱き締められたまま私は木々を薙ぎ払って山の斜面を転がり、山道のガードレールに背面から激突し、私達は血を吐く。
「カハッ?!」
「グッ、ゴボブェッ!?」
「咄嗟に賛を庇ったのか。紛い物が」
「……ゴフッ、確かに俺は貴様の様な妖怪から見れば紛い物だらう。だが、俺は人間を超えた蝶人でありながら人間の愛を知っている紛い物で良い!そんな俺だからこそどこまでも果てしない欲望が『貴様に賛を渡すものか』と、俺の魂が吼え立てるのだ!!」
刹那、真っ黒な漆黒の夜空より美しく優美に羽根を羽撃かせる巨大な蝶がお坊っちゃまの頭上に出現し、轟音と爆風を伴って奈落の身体を退けていき、山頂付近の廃工場まで奈落を押し返す。
「貴様ッ、紛い物の分際でえぇッ!!」
「パピ♥ヨン♥もっと愛を込めて!!」
ドゴオオォォ─────ンッ!!!!
お坊っちゃまの宣言と共に蝶が爆発し、山頂どころか中腹まで綺麗に裏山を粉々に破壊してしまった。これは、すごい破壊力ですね。
「賛、俺の愛はこの程度じゃ尽きないぞ」
「……フフ、はいっ!!」
───ですが、やっぱりお坊っちゃまは素敵です。