お坊っちゃまと海上デートを終えて数日ほど経った頃、津村斗貴子、武藤カズキ、中村剛太、キャプテン・ブラボー、エンゼル御前様の五人が蝶野家の正門の前に立っていた。何故か決めポーズを取っていますけど。
何か意味があるのでしょうか?
「いようっ!久しぶりだな、メイド!」
「お久し振りです、エンゼル御前様」
ハート型の羽に戻ってしまったのは残念ですが、やはりエンゼル御前様に会えると楽しい気持ちになりますね。こう、子供の頃から知っている大好きなヒーローに出会った気持ちになります。
「話をしても良いだろうか」
「あ、はい。構いません」
「我々、錬金戦団は奈落討伐のために糸色一族と一時的に協力することになった。尤もカズキの説得と奈落という因縁の相手のおかげだが」
成る程、道理で私を先に行かせて武藤カズキを本家の中に残していた訳だ。糸色境は武藤カズキの見聞を通して錬金戦団を知り、百年近く続いていた錬金術の存在を受け入れる事にしたんですね。
「今は大戦士長とお宅の当主が話している。あんな怪物にウチの上層部はネチネチと攻撃を仕掛けていたとか馬鹿すぎるぜ」
「剛太、言い過ぎだ。確かに三十人近く揃った精鋭部隊を10秒も経たずに倒した腕前は凄まじかったが、戦士長は負けていなかっただろう」
「いや、彼は加減していたし、俺は負けている。実にブラボーな峰打ちと急所を狙った打突だった。カズキの戦いを見ていなければ防御に徹することは不可能だった」
流石は歴代最強の当主様です。
十手、五十手、ひょっとしたら更に先を見据えて物事を進めている。既に糸色境の言葉は全分家へと伝達し、親戚一同にも届いている事でしょう。
特に才賀や黒賀、阿紫花は即座に馳せ参じ、光覇明宗、しろがねの方々も来る。それ程までに糸色境の影響力は凄まじく、余り深く考えると大変です。
「畏まりました。蛮竜の継承者、糸色賛も決戦の際には参ります。武藤君、きっと今回の戦いが奈落との最後の戦いになります」
「うん、分かっているよ。オレの武装錬金と賛さんの蛮竜で奈落の事を倒す。きっとオレの手に入れた新しい力はそのために在るんだ」
新しい力?
そういえば黒い核鉄に変化していないのに髪の色が蛍火色に変わっていましたね。まさか、あれを自在に扱えるようになったのですか?
「その新しい力の制御のために連日連夜の連戦を仕掛けてきた事は忘れんぞ」
「ハハハ、ごめんね。あとで埋め合わせするから」
「オレ達の分も忘れるなよ?」
「うん、忘れないよ」
そう言って笑う武藤カズキは普段の自分がやらなければという気負っていた頃より穏やかで戦いに向かおうとしている戦士の顔ではありませんね。
「いつまで玄関先で話しているんだ?」
あっ、そう言えばそうでしたね。