いつものようにメイド服に着替えて、最近は身に付けなくなっていた無貌の仮面に胡蝶を描き、ゆっくりと顔を隠すために装着する。
武藤カズキと津村斗貴子と初めて対峙したときは、この仮面を身に付けていました。金剛石の蛮竜は三回か四回であれば使えるようになったけれど。
まだ、その先に辿り着けていない。
お婆様は何を危惧して金剛槍破を邪紅刀という別の妖刀に譲渡し、私に使えないように細工を施していたのかも未だに不明のままであるものの、おそらく金剛石の蛮竜の更に先は私では扱いきれない代物だ。
「準備は出来たか?」
「はい。出来ています」
「そうか。なら問題ないな」
蛮竜に鞘袋を着せてお坊っちゃまと一緒に部屋の外に出るとLXE幹部の方々に、武藤カズキと津村斗貴子も混ざって私達の準備を待ってくれていた。
「糸色、問題は無さそうだな」
「当然でございます。メイドですので」
「武藤、そういえばこれを渡しそびれていた」
「何これ?」
「招待状だ。奈落に見せつける」
「は?」
「いわゆるウエディング突撃です」
ウエディングドレスで突撃するのも良かったですけど。奈落に向かって突撃するのにウエディングドレスは嫌悪感を抱くので突撃するときはお坊っちゃまにです。
「仲人役は絶賛争奪中です」
「斗貴子さんはどうする?」
「仲人役に興味はない」
そう言って溜め息を吐く津村斗貴子に「貴女のときもこうなりますよ」と伝えると、自然と武藤カズキに視線を向けている。
「やっぱり彼の事大好きですよね、津村さん」
「……文句あるか」
フンと鼻を鳴らして顔を逸らす津村斗貴子に武藤カズキは嬉しそうに抱きつき、騒ぎ初めてこれから戦いに行くとは思えないほどリラックスしている。
春先は敵対、夏は共闘、そして秋に最後の戦いを奈落とすることになります。幸い、ヴィクター・パワード様も居ますから空間支配は問題ありません。
「くっ、どうしてオレは18歳じゃないんだ!」
「生まれた時期のせいだな」
「ズルいぞ蝶野!」
「フッ、俺は一足先に大人になるとしよう!」
「斗貴子さん!」
「武装錬金でも年齢は変えられん」
コントのようなやり取りをするお坊っちゃまと武藤カズキと津村斗貴子の三人をクスクスと笑いながら見ていると「お前と私は同じ立ち位置だと思っているのだが?」と津村斗貴子に言われる。
「どちらかと言えば貴女はギャグもツッコミもこなせるタイプだと思いますよ」と彼女に伝えるとショックを受けたようにふらつき、武藤カズキに寄り掛かった。
そこまでショックを受けているのは予想外です。