「お坊っちゃま、本日は如何致します?」
「折角の平日だ。冷やかしに行こう」
冷やかし?と私はお坊っちゃまの言葉に首を傾げつつ、お坊っちゃまの言う相手は武藤カズキのみだと分かっているため、お土産になりそうな物の購入も視野に入れて、LXE本部の館内を歩く
マスター・バタフライ様曰く「離反組は銀成高校もしくは寄宿舎を狙っている。Badマナーな連中を助けてしまったのは私の不手際だが、君達も十分に注意しておきたまえよ」とのことです。
お坊っちゃまは私の血液や皮膚を軽く齧ったり、舐めたりと変な事を定期的に行う以外は人間のときよりアグレッシブではありますが。
おそらくそう言った行為はホムンクルスとしての食欲を満たしていると考えるべきでしょうし。小さな噛み傷であれば核鉄の治癒力を借りれば傷痕は残りません。まあ、多少の恥ずかしさは残りますけど。
「賛、ちょうど良い機会だ。俺の選んだ服を着て、武藤達に会おうじゃないか」
「ボティ・コンシャスは着ません。が、あの紋白蝶の刺繍を縫ったチャイナ服は着てます」
「カンフーパンツは履くなよ」
「残念ですが、スリットは結べますよ?」
そう言ってお坊っちゃまには私の借りている部屋を退出していただき、いそいそと蝶のブローチとリボンを解き、クローゼットを開けた瞬間、鏡越しに部屋の中に入り込んでいるお坊っちゃまが見える。
「……全く、仕方ありませんね」
チャイナドレスを手に取り、大きくメイド服を広げるように脱ぎ、瞬時にチャイナドレスに着替える。こんなこともあろうかと早着替えは会得済みです。
「おい。見えなかったぞ」
「早着替えはメイドの嗜みでございます」
「武藤みたいな事を言うな」
「武藤君も似たことを言うのですか?」
私の問いかけにお坊っちゃまは答えることなくツーンと怒ったような態度で正面玄関に向かい、私はお坊っちゃまの三歩後ろを歩く。
「お前の定位置は俺の隣だろ。さっさと来い」
「はいっ、只今…!」
「武藤の事を知るのはこの際だから許そう。しかし、他の男にホイホイと興味を抱くのはやめろ」
「私はお坊っちゃま一筋でございますよ?」
「それは知っている!」
しかし、すぐにお坊っちゃまは私の失態を許してくれる。……そう言えばお坊っちゃまが発病する前は私に近づく人を男女問わず警戒していましたね。
ひょっとしてお坊っちゃまは独占欲の強いお方なのかしら?いえ、私としては嬉しいのですが、どうやったらお坊っちゃまに更にもっと、より強く深く愛して頂けるのでしょう。