「待っていたぞ、糸色景」
蜘蛛の巣を張り巡らせた中央に首と背骨のみを残して身体を組み換える光景を晒す奈落のおぞましさに口許を押さえて、お坊っちゃまとキャプテン・ブラボーの後ろに下がって奈落を睨み付ける。
しかし、糸色景……高祖母様より以前にも同じ名前を名付けられた方を狙っていたとは、本当に奇縁というものは断ち切れないものですね。
「
虚ろな瞳。意識の混濁による一時的な記憶が再生を繰り返している。今ならば金剛槍破を撃ち込める絶好の好機ですが、身体が動かないッッ?!
「落ち着け、蜘蛛の糸だ」
「蜘蛛は柔軟性と剛性を兼ね備えた糸を生成できる、この程度の能力は予測済みだ。パピヨン、盛大に爆破しろ!戦士・賛はアナザータイプで保護する!」
「良かろう!ニアデスハピネスッッ!!!」
その雄叫びと共に私は海賊服を彷彿とさせるシルバースキンに包み込まれ、お坊っちゃまとキャプテン・ブラボーは巻き起こる爆炎と爆風の中を突き進み、奈落の身体を狙ったその時、強烈な旋風が二人の身体を押し退け、扇子が私の首を狙って一太刀の風が振り抜かれる。
「ぐっ、らあぁ!!」
「へえ、風刃の舞を棒立ちのまま相殺するとは短期間で良く鍛えているじゃないか。神無、アンタがまた何かしたのかい?」
「…………私は何もしていない……」
「そうかい」
かんな。私の半分を抜き取った白い少女を見上げると、彼女はどこか悲しげに私を見つめていた。彼女は真っ黒な瞳を向けたままずっと無表情なのに、なぜ私はそう思ったのだろうか?
「賛、来ているぞ!」
「蛮竜、雷撃を!」
お坊っちゃまの呼び掛けに応えるように青白い雷撃を放電し、奈落の触手を焼き焦がしながら雷撃を纏った穂先で破壊し、シルバースキンの防御力を利用して触手の一撃を受け止める。
───同時に触手を殴り付けて二重の極みを撃ち込み、衝撃を伝播させ、触手の根本の破壊を試みるも切り離されてしまう。
「両断!ブラボチョップ!!」
「広範囲を切り裂く手刀か、賛は出来るか」
「生憎と筋肉が足りません!キャプテン、此方のジャケットはお返しした方が宜しいですか!」
「いや、君が着ていろ!ホムンクルスと違って、戦士・賛はまだ生身の人間だ。この高濃度の瘴気を浴び続ければ身体を患う可能性もある!」
そう言って触手から飛び出してきた妖怪の頭部を粉砕し、トカゲやカエルのホムンクルスを突撃させてきた奈落から逃げるように空を飛ぶお坊っちゃまに飛び付き、ゲコゲコと鳴くカエルに怯える。
「あ、あっちに行って下さい…!」
「……いや、今はやめておこう」
お坊っちゃま、何をお考えに?