奈落の身体は少しずつ確実に新しい形を形成し、私が以前に放った金剛槍破のダメージを癒やし始めている。私とキャプテン・ブラボーは物理攻撃に特化し、お坊っちゃまの様に広範囲を攻撃できる技術は少ない。
「お坊っちゃま、爆風をお願いします!」
「一手、仕掛けるか」
金剛槍破を使えるのは二度。
そのタイミングを見極めるためには蛮竜閃と風の傷、熱風を使い分ける事こそ必要です。二重の極みを重ねて衝撃波を伝播させて倒す事は先ず不可能───ならば、最速の一撃で奈落の首を断つ。
「蛮竜、あなたの全てを私に寄越しなさい!」
ドクンッ…!
私の言葉に鳴動した蛮竜から熱く熱く猛るような高熱が身体の中に流れ込み、髪の毛が完全に白髪に変わり、お坊っちゃまの放つ蝶が爆裂すると同時に青白い雷撃を纏って、私は奈落の首を切り裂き、頭を砕く。
「無駄だ」
「なっ、くあっ!?」
砕いた筈の頭部から飛び出してきた触手に身体を絡め取られ、蛮竜を握っていた右腕が動かせず、手足を締め上げるように金属の剥がれ落ちる鈍い音が響く。これは、キャプテン・ブラボーのシルバースキンが加圧されて無理やり剥ぎ取られている!?
「その仮面を取って、よく顔を見せろ」
「この仮面は、私とお坊っちゃまの繋がりです!それに貴方のようなものに見せる顔は私にはございませんッ!!蛮竜……!!」
青白い雷撃が奈落の身体を吹き飛ばし、蛮竜を壁に突き立てて刀身の上に立つ。既に地面は触手と肉塊に包まれ、踏み込めば即座に足を奪われ、逃げることも攻めることも難しくなります。
「賛、大丈夫か?」
「はい。大丈夫です」
蝶の羽を揺らして舞うお坊っちゃまとシルバースキンを解除して、浮遊する足場に作り替えたキャプテン・ブラボーも私の傍に近付き、身体が出来上がってきた奈落に決定打を与えきれずにいた。
「無限増殖と戦ったことはあるが不死身の相手は初めてだ。賛、パピヨン、お前達の言っていた金剛槍破を撃てば勝つことは出来るか?」
「可能性は強いです。ですが、ああもバラバラになっていては奈落を貫くことは難しく、チャンスは二回のみですからタイミングを見極める必要があります」
そう、タイミングさえ合えば撃つことは出来る。
「───全く、仕方の無い子ね」
「そういうところは君にそっくりだよ」
ふわりと宙を浮く着物姿の女性……いえ、お母様が白童子に奪われていた薙刀の含牙戴角を構えて、その隣に錫杖を足場にして着地した法衣を纏ったお父様が現れたことに私は驚いていた。
「あなた、縛り上げて」
「任せなさい。単独降魔呪縛、朏の陣…!」
お母様の言葉に応えるようにお父様が繰り出した三日月状の攻撃は奈落の身体を貫き、三日月の中に身体を取り込んでしまった。
「光覇の方術か、儂には効かッ!?」
「お生憎様、ウチの夫は法力に於いて光覇明宗の高位に座する人よ。生まれ直し、況してや他人に寄生して生き永らえていたお前が抜け出すことは出来ないわ」
「……そうか。その男も輪廻を越えるものか…!」
奈落の言葉に私達は首を傾げる中、お父様は「うぅ~ん、こういうときって主人公の活躍するシーンなんだろうな」と戯言を宣っていた。