「あなた、攻撃して」
「了解だ!」
錫杖を分離して独鈷を構えたお父様は動けない奈落を攻撃しようとした瞬間、神無と神楽が奈落の目の前に転移し、お父様の攻撃を防ぐ。
しかし、今のは奈落が自分を守る盾として強制転移させ、お父様の独鈷と錫杖を防御するように仕向けていた。あの様な卑劣な真似を平然と行うなんて、何処まで外道を突き進めば気が済むのですか。
「イテテッ。風と反射を同時に受けるのはかなり危ないみたいだ。
「良いわよ。ただし、人の形を成しているからと加減することは止めておきなさい。あれは何処まで行っても過去の記憶から抽出されたものだから」
「成る程、道理で人の気配が無いわけだ」
緩やかに錫杖を元に戻したお父様は独鈷を右手に、左手の人差し指と中指を突き立てて構える。いわゆる刀印の手印だったと記憶していますけど。
「光覇明宗僧侶、秋葉平助、いざ参る!」
それにしてもお父様はあんなに強かったんですね。そう考えていると私達に向かう触手の群れを億万を越える白髪と黒髪の混色の髪が切り裂く。
「賛、貴女の父親は私を口説き落とした男。あの程度の小妖怪に負けることはあり得ないわ、何より久し振りに彼は私の名前を呼んだんだもの」
「はあ、こんなときに惚気ですか?」
「いや、コイツは本気で喜んでいるぞ」
お坊っちゃまの指摘に夫婦円満なご様子で良かったですと言葉を送りつつ、独鈷に投げ打って小規模の結界を生み出し、神楽や神無、奈落の移動する先を悉く潰して追い詰めていく。
「巓!」
「分かってるわよ、出番でしょう?」
そう言うとお母様は薙刀を中段に構え、刀身に霊気を集束させていく。私やお爺様、お婆様の持つ霊力よりも十倍、いえ、百倍以上はある気が────。
「しっかりと見ておきなさい。この技こそお婆様の扱いきれなかった蛮竜の奥義の一つ。そして、いずれ貴女の蛮竜に授ける予定の冥道残月破よ」
その言葉と共にお母様が含牙戴角で繰り出した斬撃は虚空を切り裂き、満月の様な漆黒の空間を生み出し、神楽と神無、奈落の身体を吸い込んでいく。
神無、貴女には初めて会った気がしなかったけど。
「またしても犬夜叉の技をッ」
「あら、踏み留まっていたの。本当にキッチンまわりにこびりついた油汚れみたいに面倒臭いわね。あなた、さっさと倒してもらえる?」
「トドメを刺したいところは山々だけど。コイツ、呑み込まれる瞬間に心臓を何処かに転移させやがった。本当に面倒臭いヤツだな」
お二人とも口調が少し荒っぽくなっています。
【概要用語解説】
本作の単語や転生者、その親族を解説します。
【
本名「秋葉巓」。繋ぎ読みは「
年齢は43歳。身長163cm。
「糸色賛」の母親。黒く美しい髪の毛先から中程まで白髪化した混色の長髪の女性。「秋葉流」と「糸色妙(賛の祖母、巓の実母)」の間に産まれた現地人だが、その魂はかつて世界を恐怖の底に落とそうとした全ての陰の根源たる大妖怪「白面の者」の生まれ変わり。
妖怪時代の記憶は健在だが能力の大多数を失ったため妖気は使えず、現在は髪の毛を操作して薙刀を扱える程度の普通の人間の母親をやっており、実母の愛を一身に受けて育ったため陽に囲まれた生活を送っている。
「からくりサーカス」時代に姪を誘拐した犯人の追跡時、夫「黒賀平助」と出会い、其処から行動を共にすることになる。自覚有りでダメ男に惹かれる糸色の性質を色濃く受け継いでしまっている。
【
旧姓「黒賀」。
年齢は44歳。身長177cm。
「糸色賛」の父親の転生者。愛妻家且つ恐妻家。人形遣いだったが、指を負傷して以降、中国拳法の「発勁」によって疑似血液の沸騰を利用して戦っていた。妻「秋葉巓」と出会ったとき一目惚れしたが、神のごとき神秘的な美しさを持つ彼女に自分の薄汚れた手で触れることを恐れた。
普段は優男風を装っているが筋肉質なため法衣を抜けば義父にも劣らないバルクを持つ。娘の将来を守るために「蝶野家」に送り込んだ本人であり、その事は英断だったと信じている。
転生する際に選んだ「特典」は「好きなものを出来るようになりたい」と「綺麗なものに出会いたい」。
一つ目の特典「好きなものを出来るようになりたい」は生まれ変わって初めて出来るようになった人形遣いとしての才能だったが、
二つ目の特典「綺麗なものに出会いたい」は陰陽の兼ね備わった「秋葉巓」との出会いであり、生まれ変わった大妖怪に魅入られてしまっている。