「やあ、久しぶり!」
「変態さんだあ!?」
「「「「ちゃ、チャイナドレスだと!?」」」」
往来の真ん中で平然と武藤カズキに話し掛けるお坊っちゃまに彼らと一緒に行動していた早坂姉弟は驚愕し、そして私の服装に早坂秋水を除いた男子生徒は興奮気味に食い入るように見つめる。
ノースリーブに加えて生地のスリットも深く少し恥ずかしくはあります。ですが、表情を知ることも私の素顔を見ることも無貌の仮面を取らなければ不可能です。
「どうだ、武藤。羨ましいだろう!」
「嗚呼、すごく羨ましい!!ここは蝶野達に対抗するためにもッ……斗貴子さんもあのチャイナドレスを着てくれないか!」
「誰があんな切れ込みのエグい服を着るかッ!?少しはエロスは控えろ馬鹿共ッ!貴様も貴様だ、そ、そんな格好で出歩いて恥ずかしくないのか!?」
「お坊っちゃまの好みでございます」
「良い趣味だろう。褒めていいぞ!」
スッと無貌の仮面を被ったままお坊っちゃまを見上げ、悔しさと自分の無力感に打ちひしがれる彼らを見下ろして満足げに笑っているお坊っちゃま。
そんなお坊っちゃまに津村斗貴子は「こんなのに遅れを取ったのか。私は……」と悲しげに呟き、武藤カズキの実妹・武藤まひろは私達の存在に未だに驚きと珍しさに固まっている。
「初めまして、武藤まひろさんですね」
「えっ、なんで私の名前をチャイナさんが?」
「貴女のお兄様、特にお兄様と懇意にしている女性と浅からぬ関係なのです」
「斗貴子さんと!?」
「じ、事実だが嫌な言い方だな」
武藤まひろの困惑の視線に戸惑う津村斗貴子の表情を見ることができ、先日の引き分けた悔しさの溜飲が下げつつ、錬金の戦士に気付かれないように早坂姉弟にマスター・バタフライ様の手紙を差し出す。
「……コホン。往来の場で騒ぐのはアレですし、秋水クンも銭湯に行くんでしょう?」
「あ、ああ、そうだったね。武藤、君達も騒がずに銭湯に行こうか。……そこの蝶々の仮面も一緒に来るなら来てもいいが」
「そのお誘いは丁蝶に受けよう。お前は津村斗貴子と楽しく会話でもしておけ」
「えぇ、そうしようと思います。津村さん、ご一緒しても宜しいですか?」
「…………好きにしろ。ただし仮面は外せ」
その言葉にお坊っちゃまは僅かに反応しますが、私は人間のまま生きているので外しても問題ありません。まあ、流石に私もチャイナドレスで素顔を見られるのは恥ずかしいですけれど。
「……えっ、賛お姉ちゃん?」
「おや、流石に気付きますか。お久しぶりですね、まひろさん」
彼女の呟きに移動しようとしていた皆さんの視線が再び私達に向けられる。もっとも武藤カズキの方は完全に忘れていたようですけどね。