いつも以上に身体が動く私の思い描いた動きに完璧に追随できる。妖怪の力とは、こんなにも身体の内側に秘めたる強さを引き出すのですね。
「儂に匹敵し得る妖怪変化など有りはしない!」
触手の群れを槍に変えて繰り出してきた攻撃を蛮竜の横薙ぎで粉々に斬り砕き、お坊っちゃまの爆破によるアシストを受け、奈落の浮く空に向かって駆け上がる。しかし、奈落の放った瘴気の金剛槍破によって触手は自壊し、向かう先が無くなってしまう。
あと三歩、二歩、足りないですね。
そう思っていた瞬間、高速で駆け上がってきた中村剛太に腕を掴まれ、崩壊を続ける触手の上を素早くローラーシューズのようなもので駆け抜けていく。
「まだ現状の事はよく分かんねえけど、その状態なら奈落に勝てるんだな!?あとで薙刀の事は謝るから絶対に倒してくれよぉぉぉ!!」
「えぇ、当然です!」
「それなら、モーターギアッ!」
「儂と糸色賛の語らいに割り込むな!」
「五百歳越えの爺が女々しいんだよ!こちとら初恋の相手を目の前で奪われっぱなしなんだ!!」
そんな文句と口論を繰り広げながら更に加速していく中村剛太に力一杯の勢いで上空に放り投げられ、お坊っちゃまと同じ高さに舞う。
成る程、シルバースキンの防御力ならお坊っちゃまの巻き起こす爆破のエネルギーにも耐えることはでき、未だに高く空へと逃げる奈落に届きます。
「賛、行って来い」
「行って参ります」
「行け、黒死の蝶よ!」
その爆破の合図と共に爆風を背中に受け、シルバースキンを脱ぎ捨てて更に高く空に飛び上がり、更にもっと奈落に近付く。
───ですが、あと一歩足りない!
「糸色、掴まれ!」
「賛さん、行くぞ!」
私の腕を掴んでくれた津村斗貴子と空を突き抜ける
「おのれ、次こそは───ッ」
「いいえ、次なんて在りません。これが最後です!」
ドクンッ……!
「儂は、ただ、お前が…!」
「金剛おぉ……槍破ッ!!!」
今まで聴いてきた蛮竜の鼓動よりも力強く高鳴った刹那、金剛石の刀身に変わった蛮竜を奈落に向かって振りかぶり、斬り付けると同時に金剛槍破をゼロ距離で撃ち込み、奈落の心臓も身体も何もかもを粉々に砕き、今度こそ完全に奈落を消滅させた。
ようやく、終わりました。
「しかし、どうやって着地しましょうか?」
そう今更ながら考えていると蝶の羽を羽撃かせ、優雅に美しく空を舞うお坊っちゃまが現れ、私の事を抱き締めるように捕まえてくれた。
やっぱり、ここが一番安心できますね。