白黒の糸色賛 序
「……なんだ、この酒樽は?」
「通販販売されていた産地直送タイプの呪泉郷の一つです。しっかりと双子に変わる物を探して、吟味し、最も本物だと思える物を選びました」
これで違ったら中国にお坊っちゃまと婚前旅行することになります。私にとってどちらも嬉しいことなので、どちらでも構いませんけど。
「じゃあ、この桶と柄杓も呪泉郷に関わっているものでいいのか。しかし、こんな水で性別や見た目を作り替えることが本当に出来るのか」
糸色本家。
正確には糸色景様のお兄様たる糸色姿様は糸色家系図に性別を自在に変えていたという話は残っているので、更に言えば奥様も性別を自由に変えていたそうです。東方の秘宝、とても神秘的で楽しみです。
「では、入水致します」
「水着には着替えないのか」
「そのまま被るべきかと」
そう言って私は酒樽の蓋を破壊して足先から頭の天辺まで浸かり、ドンと何かが増えた感覚にビックリしながら目を開くと白髪の私が此方を見つめていました。
「「ぷはあっ……成功ですね」」
「双子メイドのハーレム再びか」
酒樽を破壊して身体の不調を確かめるために蛮竜を呼び寄せる。しっかりと私の元に蛮竜は訪れ、目の前に立つ白髪の私が呼べばそちらに舞う。
力量も技量も変わり無く完璧に私のままです。
「あとは、この止水桶をお互いに振り撒けば」
「私達はれっきとした双子になりますね」
私達は交互に柄杓を振りかけて、お湯を被るも一人に戻ることはなく効果は永遠の物になった事に満足していた瞬間、お坊っちゃまの「しかし、俺はどっちと結婚式を挙げることになるんだ?」という呟きに空気が凍る。
「当然、私です」
「勿論、私です」
「「…………」」
「まあ、二人とも俺の愛する賛だ。どちらとも結婚式を挙げてしまえば問題ない。武藤のヤツに更なる自慢が出来ると考えれば更に良い気分だ」
お坊っちゃまの言葉に私達は顔を見合わせる。
「そういうことでしたら」
「私達は争う必要はありませんね」
「しかし、武藤君に自慢ですか」
「カズキ君は対抗してきそうですね」
やはり、あのときの私ですね。
なんとなく別人格として身体の中に入っている感覚には気付いていましたけど。こうして、しっかりと話し合えるのはとても素敵な事です。
「攻爵さん、カズキ君に自慢するのは良いですけど。それで被害を受けるのはいつものごとく斗貴子さんなのではないでしょうか?」
「津村さんは武藤君が大好きだからセーフだと私は思うのですが、やはりお坊っちゃまにご提案とご指示を貰えると嬉しいです」
そう言って私達はお坊っちゃまの両腕に抱きつき、見上げるように話すと「美人姉妹のメイドというものも中々に趣を感じるものだ」と呟いている。
あとでお母様とお父様に報告ですね。