「はあっ、はあっ、本当に何なんだ!?」
そう文句と怒りを発露する津村斗貴子は唯一の安息地とも言える寄宿舎の一室。武藤カズキのベッドに腰掛けて、私達に向かって問い詰めてきました。
しかし、何なんだと言われましても。
「17歳を迎えた糸色家男児は本家分家を問わず、一目でも目が合えば婚姻するという仕来たりを守っているだけです。ちなみに女児は参加不参加自由型です」
「私はまだ16歳だからお見合いまだなんだー」
「まひろは誰にも嫁がさん!」
「独り身のお婆ちゃんになっちゃうよ!」
「────と。斗貴子さんもカズキ君を守らなければまひろちゃんが言ったように、そうなる運命を辿るかも知れないですよ?」
白髪の私の脅すような言葉に舌打ちをする津村斗貴子に「今日を乗り切れば大丈夫だから安心してよ、斗貴子さん」と武藤カズキは目隠しを着けて笑う。
彼が手を握っているのは私です。
「武藤君、浮気はダメですよ?白髪からも言って上げて下さい。津村さんが怒るよりも先に間違われたことにショックを受けています」
「逆に考えると私達と斗貴子さんの気配は似ているということになりますね。一生涯の好敵手として、とても嬉しいと思いますが?」
「確かにそうですね。良いことです」
私達はお互いの言葉に同意し、津村斗貴子を見ると「あれだけ良いことを言っていたくせに、私と糸色を間違えるのか」と少しだけ拗ねてしまった。
お坊っちゃまは相変わらず楽しそうに寄宿舎の外を眺めている。チラリと窓の外を見ると百人近く集まった少女達がジリジリと寄宿舎に迫り来ていた。
これは、大ピンチでございますね。
「津村さん、廊下にも来ていますよ」
「チッ。カズキ、一先ず裏山に逃げるぞ!」
「りょ、了解だけど。流石に目隠しはキツい!」
武藤カズキの言うように目隠ししたまま登山するのは難しいでしょうが、津村斗貴子を愛しているのならば絶対に登頂できる筈です。
「バカめ武藤。こういうときはプライドを捨て、津村の背中におぶさるのだ!そして、あわよくばの蝶・デンジャラスなアクシデントを巻き起こすのだ!!」
「お坊っちゃま、どうしたのですか?」
「攻爵さん、お疲れなら膝枕をしますか?」
白髪の私の言葉に頷くお坊っちゃまの手を掴み、自分の方に引き寄せて膝枕ではなく、私はお坊っちゃまの頭を胸の奥まで包み込んであげるようにハグをする。
「ふむ、これこれでアリだな!!」
「んッ。擽ったいです、お坊っちゃま」
「黒髪の私だけズルいです、私もしたい」
白髪の私のお願いを承諾して彼女と一緒にお坊っちゃまのことを抱き締めながら津村斗貴子と武藤カズキを見送り、ポツンと取り残されたまひろさんに「武藤君達の最終局面の瞬間をお願いします」とハンディタイプのビデオカメラをまひろさんに預けます。