蛮竜の返却を要求する糸色本家の家老の言葉をバッサリと断り、私を越える強さを持つ者になら譲るのは吝かではありませんが問題は分家筋です。
私のように平均的な女性より小柄な女に振れるなら自分にも振るえると勘違いし、かなり糸色本家は面倒臭い事になっているようです。
そもそも御当主様は境様です。
蛮竜だって境様と同時に呼び出したら絶対に彼の元に向かうでしょうし、なにより境様は私を越える強さとカリスマを持つ人格者です。まあ、あの人は優しすぎるように見えて全ての物事を簡単に出来てしまう退屈な世界に生きていますので、仕方ないことです。
「黒髪の私、薙刀の手入れは終わりましたよ」
「白髪の私、お手入れありがとうございます」
「構いませんよ。しかし、蛮竜の事を勘違いしている人は本当に多くて困ります。あくまで蛮竜は糸色の血を継ぎ、相楽の血を継いでこそ自由に使えるというのに、境君が何故刀なのか理解しなさい」
「白髪の私は毒舌でごさいますね。お坊っちゃまにはお聞かせることは出来ませんね」
そう言って私達は会話を続けていると未来に帰らず、現代を楽しんでいる私の娘である倫さんが白髪の気だるそうな男の子を連れてきました。
「ママ、ようやく二人になったのね!」
「倫さん、こんにちは」
「えぇ、こんにちは!ほら、白髪のママに挨拶しなさいよ。まだ同じ母親なのに異母姉弟みたいだってことを気にしているわけ?」
「倫姉さんは気にならないのかよぉ…」
どうやら白髪の男の子は白髪の私の子供のようです。倫さんに懐いているみたいで、ほうっと安心しましたけど。やっぱり二人とも顔は似ていますね。
「秋葉信、信じるの『信』が名前っす」
「繋ぎ読みは絶信よ、絶対に信じるという意味を込めて付けて貰った名前を、この馬鹿弟は適当に付けたと思っているみたいだから、白髪のママからも言って!」
やはり、どのご家庭もそういう事情はあるのですね。それに二人とも産まれた時間がズレただけで、双子というわけではないのでしょうね。
「私の息子ですか。宜しくお願いいたします」
「……母さん、若いね」
「今月、二十歳になりますよ?」
「……あ、うん」
なんだか雰囲気はお坊っちゃまに似ていますね。
「そういえば長く滞在していますが、タイムパラドックスなど起こり得る現象は心配ないのでしょうか?」
「ああ、そこは大丈夫だよ。矛盾の生じる段階は過ぎているし、それにウチの家系って縦の時間軸を大切にしているみたいだからタイムパラドックスは起こらないと思うから安心してよ」
成る程、それなら何も問題ありませんね。