お坊っちゃまの高らかな言葉に溜め息をこぼす信君の頭を優しく撫でてあげる白髪の私は「大丈夫ですよ。信君なら素敵な人と出会えます」と励ましています。
私も加わるべきでしょうか。
「黒髪のお母さん」
「なんですか?信君」
「二重身体って、どういう感じ?」
「「こういう感じです」」
「分かんないよぉ…」
双子になるという呪いとも祝福とも言えますが、白髪の私もお坊っちゃまのおかげで幸せです。強さも対等ですし、しっかりと鍛えれば勝ることも、あるいは怠けて鍛えずに劣ることもあります。
最近、分かったことですけど。
白髪の私は妖怪としての存在感を強めている状態であり、狐耳や狐の尾を生やしてしまうことも稀にあります。その時は私も半妖化してお揃いですね。
「信君は考えすぎですね。私も黒髪の私も、お母さん達は好きで二人になりましたから信君が戸惑う必要はないんです」
「そうですよ、信君。私も白髪の私も、お母さん達は貴方の事を愛していますからね。こうして二人で貴方の事を大切に思えるんです」
「……そっか、ならいいかな」
「話は終わったようだな」
軽やかにお庭に着地したお坊っちゃまに視線を向け、彼の腕の中で不服そうにしている倫さんに「一体、どうしたんですふにか?」と問いかける。
「パパが文句を言うのよ!ソウヤと結婚するのは私なのに酷いわ!」
成る程、そういうことですね。
「お坊っちゃま、恋路を邪魔したのですか?」
「ムッ。俺がするわけないだろう、ソウヤも一家団欒を楽しんでいるときに、いきなり押し掛けるのはマイナス効果だと伝えているだけだ」
「確かにそうですね。倫さん、恋に盲目過ぎるのはダメです。私はお坊っちゃまを愛していますが彼の邪魔になることはいたしません」
「くっ。我が親ながら惚気が強い!」
「お姉ちゃん、帰ってからデートすれば良いんだからさ。ソウヤに少しくらい安らぎを与えるのは良いことだとオレは思うよ?」
親子で話し合う光景を微笑ましく眺めつつ、私は白髪の私と一緒に縁側に腰掛け、のんびりと風に舞う花びらと親子三人の壮絶な論争を眺めています。
「ずっと続くと良いですね」
「はい。ずっと続いて欲しいですね」
そう言ってお互いに顔を見合わせ、クスリと笑いながら私達は武装錬金を使ってまでソウヤ君のところに向かおうとする倫さんの肩を掴み、縁側に座らせる。
「倫さん、少し落ち着きましょう」
「倫さんは優しい女の子です、ソウヤ君を大切に思うなら今は待ちましょう?」
「……うん、そうする。ありがとう、ママ」
これくらい良いんですよ。
私達は家族なんですから。