濃霧の中を突き抜けた瞬間、私とお坊っちゃまは言い様の無い嫌悪感を抱いてしまう。
銀成高校の生徒が、武藤カズキと津村斗貴子に物を投げ付け、見たことのない人間型ホムンクルスと巨大なホムンクルス……なのかも分からない怪物にも椅子や机を手当たり次第に投げている。
深呼吸を繰り返しながら蛮竜を地面に放り投げ、津村斗貴子に群がる木っ端なホムンクルスを破壊し、彼女の隣に着地する。
「津村さん、加勢致します」
「要らん!」
「では、好きにお相手をします!」
バルキリースカートを高速で駆動させ、齧歯類や爬虫類、植物のホムンクルスを蛮竜の横薙ぎで斬り砕き、津村斗貴子を狙った机を切り裂く。
「雑魚に負けるなよ、武藤!お前と決着をつけるのはこの俺だ!」
「決着は付ける!でも先にコイツらを倒す!」
飾り布をマフラーのように巻き、正体を隠す武藤カズキと共に闘うお坊っちゃまは迫り来る動物型ホムンクルスを一撃で複数破壊していく。
その間もマスター・バタフライ様は何処にいるのかと濃霧の立ち込める中を探す。───ですが、マスター・バタフライ様の気配は感じるものの、先すら見えない濃い霧に正確な位置と彼を見つけることは出来ない。
「臓物をブチ撒けろッ!!」
「津村さんも叫ぶのですね!」
「お前は後回しのつもりだったが、殺す!」
バルキリースカートを振るってきた津村斗貴子に驚きつつ、なにか怒らせるような事を言ってしまっただろうかと考えた瞬間、私はLXE本部に入るために必要な合言葉を思い出してしまった。
「あっ……分かります。辛かったですね」
「やめろ!哀れむな!」
私も最後の決めポーズは恥ずかしかったです。
そう津村斗貴子に話しながら蛮竜を放り投げ、近づいてきたホムンクルスに二重の極みを連続で撃ち込み、粉々に殴り砕き、回し蹴りと同時に二重の極みを決める。この左右の拳を振るえる間合いさえあれば私の二重の極みは絶対に負けません。
両手の塵を振り払って蛮竜の柄を握る。
些か量が多くなって来ましたね。
「津村さん、少し後ろに」
言うと蛮竜の刀身を後ろに引き絞って構える。
ドクンッ…!ドクンッ……!
「蛮竜……閃ッ!!!」
熱風を纏う蛮竜を一気に横一文字に振り抜き、何百と造られたホムンクルスの胴体を熱風が焼き焦がしながら両断していき、私は蛮竜を肩担ぎにして生き残った残りのホムンクルスを数える。
「まだ五十人近く居ますね」
「それがお前の武装錬金か?」
「?いいえ、此方は家宝の大鉾です」
「ああっ!それってお祖母ちゃんの実家に置かれてたデカいヤツだったんだ!なんか見たことあるなとは思ってたんだよ!」
「……使ってみます?」
「いや、オレにはサンライトハートがある!」
素敵な名前の武装錬金ですね。
チラリと津村斗貴子を見ると顔を逸らした。
「フフ、仲良しですね♪︎」
「う、うるさい!」
私の言葉に顔を真っ赤にして怒る津村斗貴子の反応を楽しみつつ、お坊っちゃまは「つまり、俺は武藤の叔父になるのか?」と呟いています。
まだ、早いと思います……。