「流石に数が多すぎるぞッ……」
ホムンクルスの攻撃と全校生徒の物を投げ付ける行為に疲弊する武藤カズキの姿に顔を怒りで歪めるお坊っちゃま、悲しみに顔を変える津村斗貴子、二人は彼と言葉では例えられない関係だ。
何より向こうは覚えていなかったとはいえ、この様な仕打ちを受ける再従兄弟を見るのは私も辛く、怒りと嫌悪を抱いてしまう。
いっそのこと私が────。
『クォラアァーーーッ!!!みんなで一緒に海に行くんだろうが!そんな奴ら、チャッチャとやっつけちまえ!!』
キーンと響き渡るスピーカーの嫌な音を押し退ける程に大きな声援が聴こえる。チラリと放送室の窓を見れば武藤カズキと良く話していた三人の男子生徒が見える。
ああ、良かった。
二人には誰なのかを分かって、信じてくれる友達がいるんですね。これなら二人にこの場を任せて安心して、お坊っちゃまの元に行けます。
「ありがとう、みんな…!」
「全く、無茶をする」
「やはり人間の友情は尊く、実にExcellentだ。パピヨン、Lady糸色、君達の羽撃きを祝う事も兼ねていたが想定以上に離反組は力を蓄えていた様だ。ヴィクターの所へ向かってくれ」
突如、私達の真ん中に現れたマスター・バタフライ様に驚き、バルキリースカートを構える津村斗貴子の威圧を気にも止めず、彼は片腕と顔の一部が欠けた姿でさえも優雅に空を舞っている。
「賛、武藤達と行ってやれ」
「……畏まりました。お坊っちゃま、余りご無理を為さらないように」
私は武藤カズキと津村斗貴子に視線を向け、昇降口へと駆け抜ける。彼女は私をホムンクルスと思い込んでいるため、必ず追ってくるでしょう。
それに、私達が居てはお坊っちゃまは本気で武装錬金を使用することは出来ないご様子です。
「さあ、俺の羽撃きを見るが良い…!」
大爆発を巻き起こすお坊っちゃまの武装錬金の破壊力はおそらく現存する武装錬金の中で最上位に位置する能力、加えてホムンクルスの強靭な肉体、やはりお坊っちゃまは素敵な主人様ですね。
「止まれ!」
「えぇ、止まります。そして、お二人は空を飛ぶホムンクルスまでお届けします!!」
「行こう、斗貴子さん!」
「チッ!今回だけだからな!」
二人は私の言葉に瞬時に応えるように飛び上がり、蛮竜の刀身を踏み台にして濃霧の立ち込める空を飛ぶ鳥類型のホムンクルスへと攻撃を仕掛け、飾り布のエネルギーを利用して屋上に着地した。
「さて、私は貴方達の相手ですね」
くるりと後ろに振り返って昇降口へと集まってきた人間とも動物とも言えないホムンクルスに蛮竜の矛先を突きつけ、ゆっくりと構える。