「エロスはいかんぞ!」
「まあまあ、斗貴子さん」
プンスコと怒る津村斗貴子、彼女を諌めているものの鼻血を垂らす武藤カズキの視線を外れるように背中を向け、満足そうに舌なめずりして笑みを浮かべるお坊っちゃまからも視線を外してボタンとリボンを締め、蝶のブローチを襟元に着ける。
「コート、ありがとうございます」
「気にするな。乙女の柔肌は守るものだ!」
シルバースキンのコートをキャプテン・ブラボーに返却し、お坊っちゃまの隣に移動する。蛮竜は地上に置いたままで、本日は傷を負った上、お坊っちゃまに血を二度も捧げてしまったため────。
もう戦う気力はありませんね。
「しかし、ヴィクターに、黒い核鉄か」
「糸色賛、お前は何か知っているか?ヤツはカズキとお前を見て『懐かしい気配だ』と呟いていた。おそらく百年前、お前達の高祖父・高祖母はヤツと、ヴィクターと会っているはずだ」
「それなら本家に行けば分かると思いますよ。武藤君、津村さんを連れてお婆様達にお会いしに行ってみてはどうですか?」
「カズキ、祖父母の家は何処にある?」
「お祖母ちゃん家は長野県だけど。京都とか北海道、和歌山県、東京にも親戚はいるよ?」
「ず、ずいぶんと大家族だな」
ウチの家系って色々と大変な出来事や事件に巻き込まれることが多いですからね。特に昭和の時代は激動だったとお祖父様が話していたのを覚えています。
「ちなみに付け加えると。賛と武藤はお前達が使う日用品から家電、果てにはロケットや防衛機関に至るまで世界経済の三割を担っている一族だ」
「いやあ、改めて言われると変な気分」
アハハと笑う武藤カズキを尻目にこめかみを押さえて悩んでいる津村斗貴子とキャプテン・ブラボー。まあ、そういう反応は想定していましたけど。
「カズキはお坊っちゃまだったのか」
「いやいや、そんな大層なものじゃないよ。斗貴子さん、ウチは親戚が多いから手分けしたりしてるだけだし。まひろもお嬢様って感じじゃないでしょ?」
「……あの子は天然過ぎる」
「とりあえず、俺は黒い核鉄とヴィクターについて調査を進める。戦士・斗貴子と戦士・カズキの二人は夏休みを楽しみつつ、調査を進めるように」
そう言うとキャプテン・ブラボーは二人のムーンフェイス様を連れて何処かに行ってしまった。私達も武藤カズキ達も満身創痍の疲労困憊、次に戦うときが最後になりそうですね。
四つの核鉄を仕込んだお坊っちゃまと共に彼女達と分かれて、マスター・バタフライ様の話していた予備のセーフルームへと私達は向かう。
……その前に蛮竜を回収しないとですね。