LXE離反組はリーダー以外のホムンクルスは全滅し、現在も逃亡を続けるリーダーを金城さんが二つの核鉄(お坊っちゃまが奪い取った陣内という核鉄を返却したもの)を使って追跡している。
そもそも離反組の大多数は急拵えのホムンクルスばかり。幹部クラスは金城さんとマスター・バタフライ様、LXE創設者にして初代バタフライ様の助力を得たため、こちら側の被害はムーンフェイス様の捕獲と早坂姉弟の脱退、そして陣内さんの死亡のみ。
まあ、ムーンフェイス様は自由気ままに月光浴を楽しめる場所を貰えれば問題ないとは思いますけど。私が最も危惧している問題はお坊っちゃまです。
「お坊っちゃま、コーヒーをお持ちしました」
「嗚呼、助かる。しかし、ひいひいじいちゃんが創設者だと思っていたのに、まさか更に一つ前の世代、ひいひいひいじいちゃんがLXE初代首領とはね」
「やはり百年前の出来事ですし。直接出向いて調べるということも難しいですからね」
「いや、ご丁寧に書物は残っている。おそらく、このセーフハウスは俺のために二人のじいちゃんが残してくれた錬金術の遺産だろう」
修復フラスコの中に籠っているお坊っちゃまの言葉を聞きつつ、フラスコの上部を開け、内部にポットとマグカップを専用の器具でお渡しする。
フラスコの中に私は入ることは出来ないので仕方ないですけど。お坊っちゃまと触れ合えないのはほんの少しだけ寂しく思います。
「賛、武藤達の動向はどうなっている」
「武藤君は夏休みの初日になりますね。千葉の海豚海岸に行くと言っていましたけど。お坊っちゃまさえ良ければ一緒に遊びたいと」
「ホウ。決着前に休息のお誘いか」
そう言うとお坊っちゃまはマグカップに淹れたコーヒーを飲み、楽しげに笑う。お坊っちゃまが武藤カズキとの決着をつけるとき、私と津村斗貴子の決着もつけることになりますね。
一度目は出遅れ、二度目は妨害による引き分け、三度目はヴィクター・パワードと闘うことを優先してしまったため、あれは中断という扱いですが。
お坊っちゃまの羽撃きを見届けるまで私は死ぬことも負けることもありません。何より、ヴィクター・パワードと戦ったときに感じた心の昂り。
あれは津村斗貴子にも感じている。
「賛、水着の用意はしているか」
「私はお坊っちゃまのお世話をしているのでお買い物に行く以外は常にお坊っちゃまのお側に居ましたので用意はしておりません」
「ふむ、ならば水着を買いに行くか」
「……エッチなのはいけませんよ?」
「………………分かっている」
まさか、買うつもりだったのですか?