ビニールシートを浜辺に敷き、ビーチパラソルとクーラーボックスを置き、BBQセットを用意してお坊っちゃま厳選の蝶・ゴージャスな高級肉と野菜を手早くカットし、串に刺して炭火の火力でじっくりと温めた金網で焼いていきます。
パタパタと団扇で炭火を扇ぎ、火力を調整していると津村斗貴子の視線を感じ、そちらに身体ごと視線を向けるとビーチパラソルの影に座り、大はしゃぎする武藤カズキを見つめている。
やはり、ストロベリーなご関係なのでしょうか。
「……お前は泳がないのか?」
「津村さん、人には不得手があります。私は海の波で酔いますので泳ぐことは出来ません。それに何やら不穏な気配を海中に感じますし」
「パピヨンか?」
「フフ、そうかも知れませんね」
そう津村斗貴子と他愛ない会話を交わしつつ、お坊っちゃまに視線を向けた瞬間、蝶々覆面を残してV字水着が通常の水着に変化していた。
「……羨ましいです…」
本当にお父様もお婆様も船は当然の如く、飛行機に乗っても酔うほど乗り物と相性は良くありません。普通の車は平気なのですが。
しかし、泳げるのはとても羨ましいです。
「津村さん、焼けましたよ」
「スライスした玉ねぎが何故崩れない?」
「フフ、網焼きはメイドの嗜みでございます」
「今のはカズキの『何を隠そう、オレは達人だ』の別バージョンか?……ん!お、美味しい、炭火の香ばしさも相俟って食欲を唆る味だ!!」
「昨晩の内にお肉の方に香味や下味をつけ、じっくりと寝かせていたので焼きながらお肉の中に染み込んでいたものが焼けると同時に脂身に混ざって表面に出てきているんです」
そう津村斗貴子に説明していたとき、ドタドタと砂を蹴って此方に向かってくる武藤カズキ達の人数分に合わせて、受け皿と濃い味を楽しみたい人のために用意したタレを置き、クーラーボックス内のジュースを取り出す。
「賛、俺の分はどれだ」
「此方です、お坊っちゃま」
スッと串や気にしていたお肉と野菜を差し出した瞬間、お坊っちゃまは串ごと食べてしまった。ホムンクルスとは金属も食べられるのですね。
「賛お姉ちゃんの焼いたお肉美味しいっ!」
「ムッ!ここは兄として、賛さんにも負けないオレも本気を見せるべきだな!何を隠そう、オレは焼き肉(を焼いて食べる)達人だァ!!」
「おお、お兄ちゃんが本気になった!」
私の真横に移動した武藤カズキがまだ焼いていない、串にも刺していないお肉、切り分けていない野菜を手に取り、素早くカットしていく。
「これは、素晴らしい手際です!」
「たまに賛も変になるな」
「カズキはいつもだ」
フフ、私も負けていられませんね!!
…………しかし、あの海から感じる嫌な気配は?