すっかりと日の暮れてしまった海岸に戻り、久しぶりに会うおじ様ととら様を見上げる。獣の槍は白面の者を倒したときに役目を終えたと聞いていたのですが、まさかウソだったのでしょうか?
「ああ、コイツか?」
「はい。役目を終えたと聞いていたので」
「あー、うーん、なんて言えば良いのかな。知らない蝶々のオッサンに貰ったんだよ、獣の槍には強さも速さも劣るけど。使い勝手は良いからな」
「ケッ。そんなもん造るなんざろくでもねえやつなのは間違いないぜ。それより儂の家来になんじゃなかったのかよ、チビ!」
チビ……まあ、平均に比べれば他の女の子より小柄ではありますけど。チビと呼ばれるほど小さいとは思わないのですが、どう言い返せば良いのでしょう。
「俺のメイドをチビ呼ばわりとは、躾のなっていない害獣がいたものだな!」
「へ、変態だ!」
「パピ!ヨン!」
黒色火薬の武装錬金「ニアデスハピネス」を発動して飛翔していたお坊っちゃまは私の隣に着地し、ギュッと私の肩を握るなり、自分の身体に抱き寄せてしまう。ど、どうしましょう、私の心臓が思わぬ展開に、どうしようもなくドキドキしています。
「儂の家来だ!」
「いいや、俺のメイドだ!」
こ、ここは、あの言葉を言うべきなのでしょうか?
「お前ら、賛を労ってやれよ。なあ?」
「へ、ああ、そうですね。お坊っちゃまもとら様も喧嘩するのは止めて下さい。とら様、今の私はお坊っちゃまのものなのです」
「じゃあ、ソイツを喰えばいいのか」
「何も分かってねえじゃねえかァ!!」
とら様の言葉に怒ったおじ様は獣の槍(二代目)を振り回しながら、とら様を追いかけ回す。「うしおととら」に良く出ていた場面だと思っていたそのとき、いきなりお坊っちゃまにお姫様抱っこされてしまった。
「お、お坊っちゃま?」
「あの化け魚の腹の中で足を痛めているのは一目で分かった。このまま宿まで運んでやるから、静かに掴まっていろ。全く、お前の身体を傷付けて良いのは俺だけだと言っているのに、お仕置きが必要そうだな」
「お、お手柔らかにお願いいたします……」
そう言って私は津村斗貴子達の宿泊する宿屋に戻りながらおじ様ととら様に視線を向ける。夕焼けに染まる海面を跳ねる人影と獣の姿が見える────。
種族を越えた友情とは美しいものです。
「来年も一緒に海水浴をしましょうね」
「何処までも高く羽撃く俺の姿をお前に魅せてやる。が、その前に武藤カズキと決着をつけねば真の意味で俺は舞い上がることは出来ない」
私も同じです、お坊っちゃま。
この夏休みの間に津村斗貴子と決着をつけ、私は貴方のお側で華麗なる羽撃きを行うあなた様を最期まで見届けるつもりです。