錬金の戦士にホムンクルスの幼体が寄生して二日目のお昼休み。渡り廊下や屋上を歩く彼女の姿を視界に留めることに限度を感じつつある。
彼女も蛙井の監視に気付いているのだろう。
彼のイヤらしい視線は独特だから仕方ないことではあるが、あそこまで彼女に執着している理由も分からない。いや、アレの原動力は単純な食欲と女性を好んで捕食しているのが理由ですね。
「(……あれは、コモリガエルの子機?)」
屋上の手摺の支柱に張り付く機械的な見た目のカエルに彼女は気付いた様子も無く、右の腹部を押さえるように双眼鏡を使っている。
寄生したホムンクルスの幼体に重みと痛みを感じている筈なのに彼女は平然と澄ました顔だ。弱味を見せずに敵情視察……彼女の仲間は
ゆっくりと授業の終了を告げる終鈴を聞き、素早く荷物と体操着を鞄と補助鞄に教科書とノートを整頓して差し込み、去年まで後輩だった同級生に「それではお先に失礼致します」と挨拶を済ませて昇降口───新校舎の裏側に移動し、コモリガエルの子機を踏み潰す。
「私の私生活を覗き見するのは止めなさい。お坊っちゃまのご命令であろうと消しますよ」
「ホントに生意気でムカつくなァ…でも、君みたいなのが最後は見苦しく命乞いしてるところが見たくて仕方ないんだよね」
自分の強さとホムンクルスとしての食欲に突き動かされて現れた蛙井は塀の上に腰掛け、私の事を見下ろす様に塀の向こう側に潜ませていたコモリガエルの子機を私に向かって一斉に出撃させてきた。
「適当に痛め付けたら食べてあげるよ!」
「───だ、そうです。お坊っちゃま」
「は?」
そう言って携帯電話に語り掛ける私に蛙井は困惑と戸惑いの表情を浮かべ、私の持つ揚羽蝶のキーホルダーを付けたシルバーカラーの携帯電話を見つめている。
『蛙井、お前の行動は予測済みだ。あのまま大人しくしていれば破壊は止めてやるつもりだったが、俺のモノを侮辱した罪はキッチリと清算して死ね!』
ピッと通話を切る音が静かに響き渡る。
「
「ふ、ふざけるなァ!!」
蛙井の意識と連動して作動する十匹の子機の射出する鋭利な管を避け、私はカエルの腹や頭部を殴って塵芥へと粉砕して破壊していく。
「な、なんだよ、それ?」
「少し古い映画にはなりますが、とある西部劇に登場していた全ての物を打ち砕く拳『DOUBLE EXTREME』という技術をご存知でしょうか?」
「あ、あれは眉唾のインチキじゃ……」
「生憎と眉唾のインチキではありません」
私の言葉に顔色を悪くする蛙井に溜め息を吐き、右手を握り締めて後ろに引き、左手の指を揃えて照準器の如く構える。これは最短・最速・最適の距離を撃つために身に付けた構えです。
「あの技術は世界を巡り歩いた私の高祖父・相楽左之助の体得した万物必壊の極意であり。───そして、その正式名称を『二重の極み』と称します」
「ヒィッ!!?」
残りの子機を飛ばして本体たる蛙井は逃げていく背中に横隔膜を刹那の内に二度震わせ、空気圧による二重の極みを撃ち込み。
蛙井の面倒な子機を粉砕して彼を追いかけていた途中、赤い腕章を付けた2年生の男子生徒に話し掛け、何かを持ち掛けている光景を目撃する。
あの少年を倒せば挽回できると考えての行動でしょうが、本当に浅はかで何も考えず、お坊っちゃまをネット内で傷付けた相手ですね。
「糸色賛」の名前は感想から頂きました。
ありがとうございます!!