【本編完結】黒死の蝶の唯一留まる花   作:SUN'S

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ヴィクター化の予兆 急

武藤カズキの口座にお金を振り込み、移動手段や食事の確保を手助けするお坊っちゃまの優しさに流石はお坊っちゃまですと感心していると、津村斗貴子に「何故、お前はカズキの口座を知っているんだ?」と問われる。

 

「雅桐銀行と糸色家は交流もありますから」

 

「日本の大銀行じゃないか!?」

 

「左様でございます」

 

「本当に、お前の家はどうなっているんだ」

 

高祖母の友人に雅桐銀行を創立し、日本政界の重鎮に登り詰めたという方もいる。その方は最も愛する人の名前を姓名に刻み、その名前を永遠に残す事と決意し、本当に成し遂げた人です。

 

あと私の家は普通の家ですから下手に期待を持つのは止めて頂けると嬉しく思います。まあ、津村斗貴子は以前、私と武藤カズキの家系の話をお坊っちゃまに聞いてますので問題はありません。

 

「賛、此方に来い」

 

「如何なさいました?お坊っちゃま」

 

そう言ってお坊っちゃまのお側に歩み寄ったその時、素早い動きで足元を這うように日本刀が現れ、切っ先が靴底の革を切り裂く。

 

先日の忍者の方、二対一を仕掛けるつもりでしょうか?とお坊っちゃまに視線を向けようとしたところに大柄の巌のごとき肉体こ十文字槍を担いだ男の人が近付いてくるのが見えた。

 

今回はお客様が多いですね。

 

「蝶々覆面のホムンクルスと眼鏡のメイド。報告書に載っていたパピヨンと糸色賛だな。しかし、そのエレガントなコスチュームとマスク、ホムンクルスにも美的感覚の優れた者は居るようだな」

 

「なんだ。ちゃんと錬金の戦士にもいるんじゃないか。武藤のように、この蝶・素敵な一張羅の良さに気付くヤツがさ」

 

「ツムリン、頭が痛くなるぜ」

 

「それには私も同感する」

 

お二人のやり取りを眺めて頭を押さえる津村斗貴子とエンゼル御前様の身体を抱き締め、背後からの二度目の……先日の加えれば三度目の攻撃を仕掛けてきた忍者の方の刀の側面を蹴り、二人を空に向かって飛びやすいように優しく投げる。

 

「忍者の方、この様な人の多い場所を選んだ理由は二重の極み対策ですか?それとも蛮竜の呼び出しを封じるためですか?」

 

「────否、オレの役目は分断だ」

 

その言葉を聞いた瞬間、私は津村斗貴子とエンゼル御前様の跳ぶ空を見上げる。しかし、空には何も居らず、真後ろに向かって仰け反り、身体を捻る反動を利用し、そのまま二連続の蹴りを放つ。

 

カッ……と眼鏡のブリッジが斬れる。

 

「やはり、忍者はウソつきですね」

 

「忍びは真実を隠すものだ」

 

確かに、その通りでございますね。

 

 

 

 

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