繁華街を抜けて地元の方々にも打ち捨てられた倉庫街にてお坊っちゃまは戦部と名乗った錬金の戦士と激しい攻防を繰り広げている。
私は瓦礫やコンテナの破片を弾き、津村斗貴子とエンゼル御前様の身体を守りつつ、二人の戦いを見守っている。忍者の方が何処に潜んでいるのかが分かれば応戦に出向けますが、臭いも気配も感じない。
空間を移動する能力。透明に変わる能力。高速で動ける能力。候補は幾つか思い浮かびます。ですが、そのどれもが当てはまらない気もしてしまう。
「ヌゥンッ!!」
「ホウ。槍捌きは中々だな!」
十文字槍の薙ぎと突きを紙一重の間合い、最小限の動きで避けるお坊っちゃまは手のひらに作り出した黒色火薬の蝶を炸裂させ、穂先を粉々に破壊する。
───ですが、瞬時に十文字槍は修復を完了する。
「我が槍をこうも容易く躱すか。貴様も槍使いかと思ったが、後ろのメイドが槍使いか?武に生きる者にとって糸色家は越えるべき至宝だ」
「……私との対決をご所望と?」
ここならば自由に振るえると蛮竜を呼び寄せようと思った瞬間、お坊っちゃまの鋭い視線を受けてしまいました。フフ、そうでしたね。今のお坊っちゃまは華麗なる変身を遂げた蝶人パピヨンです。
「津村さん、少し後ろへ」
「何を言っ!?」
エンゼル御前様の頭を掴んで後ろに引き寄せ、目の前のなにもない空間から飛び出してきた日本刀を蹴りで弾き、地面に叩きつけ、二重の極みを刀身を伝って空間内にいる忍者の方に撃つ。
流石は武装錬金、へし折る事は出来ませんね。
「ゴフッ!」
刹那、飛び散る吐血を避けながら津村斗貴子とエンゼル御前様の事を抱き締める。如何に姿を隠そうと二重の極みは万物を破壊する極意、異空間に居ようと衝撃を伝えるものがあれば確実にその身を打ち砕く。
また、気配が消えた。
今度は血の臭いもあるので追うことは出来ますが、逃げていく忍者の方よりお坊っちゃまの戦いを見届ける方が最優先事項です。
「しかし、津村さんなら受けても攻撃するのに」
「覚悟の差じゃね?」
「お前達は私を何だと思っているんだ」
「好敵手です」
「怪人ハラワタ抜き」
私達の言葉に武装錬金「バルキリースカート」を展開する津村斗貴子の攻撃を片手で防ぎつつ、お坊っちゃまの戦いに意識を向ける。
フィジカル面では武装錬金の瞬間修復機能を持つ戦部の方に軍配は上がり、テクニック面では破壊力と火力範囲に於いてお坊っちゃまに軍配が上がる。
尤も私でも気付ける事にお坊っちゃまが気付いていないわけもありませんから、いずれ勝敗を決めるときにお坊っちゃまは飛び出す事でしょう。