「ホムンクルス。核鉄。では、その人を喰らう化け物が、パピヨンお兄様がそうなのでしたらお姉様は野獣の花嫁になるということですか?」
「そうなりますね」
「すげえな、ナチュラルに肯定したぜ」
「俺は野獣ではなく野蝶だがな」
私と奇の会話に苦笑いを浮かべるエンゼル御前様を摘まんだお坊っちゃまの背後に怪しい女の子を見つけ、静かに彼女の事を注視する。
誰かの面影を感じる。
そう、この気配はヴィクター・パワードです。
しかし、見た目は金髪の少女ということは彼が人間の頃に暮らしていたという家族の子孫……いえ、あの鋭い目付きはもっと彼に近しい人ですね。
「え?」
「奇、退きなさい!」
「手を伸ばせ!」
そう思った次の瞬間、奇の足元が開き、二重の極みを爪先で行い弾ける反動を利用して彼女の事を突き飛ばし、お坊っちゃまの手を掴み損ね、私はそのまま薄暗い穴の中に落ちる。
縦に落ちた筈なのに、横に立っている。
重力の向きを曖昧になっているのでしょうかと小首を傾げつつ、武器に成り得る物が無い状況、この狭い場所なら二重の極みを集中させれば勝てますね。
「Hello。糸色賛、懐かしき友の子よ」
「……貴方がドクトル・バタフライ様ですか」
「如何にも私がドクトル・バタフライだ。我が息子、マスター・バタフライと共に戦ったと聞いたときは驚いたが、君は色濃く彼の血を継いでいるな」
「来たか。若き戦士よ」
「ヴィクター・パワード…!」
凄まじい圧力に笑みを浮かべ、拳を握り締めようとするもドクトル・バタフライ様の咳払いと指差す方に視線を向けると金髪の美しい女性がいた。
「私の妻だ」
「これは、少々手荒な姿をお見せしました。初めまして、蝶野攻爵お坊っちゃまにお仕えするメイドの糸色賛です。ヴィクター・パワード氏の奥方様、どうぞ宜しくお願い致します」
「此方こそ手荒な呼び出しをしてごめんなさい。秋葉賛さん、私達の目的のために貴女に協力して欲しいことがあるの」
「……協力するのは構いませんが、お坊っちゃまがお怒りで暴れてしまうので帰して頂けますか?」
「ふむ、確かに怒っているね。元の道を戻ればシェルターは簡単に開くだろう。行きたまえ、我々の目的は当事者が揃わなければいけない」
その言葉の意味は知らないですけど。
おそらく高祖父母の生きていた百年前の時代。まだ糸色家と相楽家だった頃から続いている盟約の様なのかも知れませんね。
「俺から賛を奪うつもりか糞爺…!」
「想像以上のBad boyだな」
お坊っちゃまは真面目な好青年ですよ?ちょっと変態さんなのかな?と思うこともありますけど、男の子はそういうものだと思っているのです。