疲労困憊で心神喪失した様な雰囲気の錬金戦団の大戦士長はサングラスを取り、静かに深い溜め息を吐いて精神を安定させようとしている。
既に退屈しのぎに膝枕を要求してきたお坊っちゃまに太股を貸して、こんなこともあろうかと用意していた毛布をお坊っちゃまに掛け、お坊っちゃまの闇夜の如く美しい黒髪の頭を優しく撫でてあげる。
武藤カズキは羨ましそうに津村斗貴子に頼んでいるけど。敢えなく却下されてしまったようです。津村斗貴子も素直にしてあげれば良いのに、勿体ないですね。
「さて本題に戻ろう。大戦士長、私達は既にヴィクター化を解除する手段を整えている。だが、そのために最も必要な物が不足している」
「……黒い核鉄、ですね」
「それもあるが答えは人手だ。君達風に呼ぶならヴィクターIIを抑え込み、彼が五十数年に渡って海底で蓄えたエネルギーを奪わなければ確実に人類は敗北する」
「ちょっと待てよ。その黒い核鉄を奪ったヤツは武装錬金を使えるのか?」
「使えるね。おそらく現存する武装錬金の中で最も奇抜で豪快な武装錬金だと言っておこう。何しろ、人間と妖怪、更には神さえも加わった大戦を彼は深傷を負いながらも生き残った」
奇抜で豪快な武装錬金とは?
「お坊っちゃま、思い付きません」
「賛、お前は静かに俺を見ていろ」
「?畏まりました」
ドクトル・バタフライの呟いた奇抜で豪快な武装錬金というものも気になりますけど。やはり私はお坊っちゃまの武装錬金「ニアデスハピネス」こそが最も美しい武装錬金だと思います。
「ヴィクター、武藤カズキ、この二名が揃わなければ五十数年分のエネルギーを奪い取ることは不可能だ。なによりエネルギーを吸収しておけば、多少なり人間に戻るときの負荷は軽減できる」
「オレとヴィクターで」
「嗚呼、そうだ。以前にも語ったとは思うが私と君のエネルギードレインを使わなければ彼の暴走を止めることも、況してや意思を持つ核鉄を封じることは出来ない」
「なにぃ意思を持つ核鉄だと!?」
「戦士長、カッコいいは無しですよ」
「……分かっている!」
キャプテン・ブラボーの性格を考えると中村剛太の仲裁は事実なのは間違いないですけど。チラチラと私達に視線を向けて、賛同を得ようとしないで下さい。
「我々は最後の調整を行うために一度帰る。武藤カズキ、君は君の望んだ通りに進みたまえ、私達は静かに君を見守ろう。そして、糸色賛、君には酷な役目を負わせてしまうかも知れない」
私の太股で寝返りを打つお坊っちゃまの背中を優しく撫でてあげつつ、高祖父母達もこんなに大変な会談を繰り返していたのかと想像すると、少しばかり大変な事かも知れない。