錬金戦団との会談は無事に終わり、向こうは熟練の戦士を派遣し、過去の罪と向き合うことになります。それにしても、私達の血筋が世界規模の大決戦を経験している事は知っていましたけど。
まさか私も経験することになるとは想像すらしていませんでしたね。ただ、やはり問題なのは海上で戦わなければいけないという事です。
私は泳げませんし、乗り物酔いも酷い。
どうしたものでしょうか。
「賛、準備は出来たか?」
「はい、出来ております」
ごく当たり前のように私の寝室の扉を開けるお坊っちゃまは珍しく普通の蝶の刺繍を散りばめた鮮やかな浴衣を着ている。私はメイド服で良いのですが、夏祭りに行くときは浴衣の方が良いという奇の言葉に納得し、私は少し濃い青色の浴衣に花の刺繍を施した物を着ている。
「しかし、武藤も急な呼び出しをする」
「彼らは夏休み中、ずっと戦っていましたから十分に夏休みを楽しめる時間はなかったから、キャプテンさんの意向で暫くお休みを貰えたそうです」
「フゥン。その話の出所は?」
「私の好敵手の津村さんです。何故か武藤君とチューしちゃった報告を受けましたけど、私はどう返事を返すべきだったのでしょうか?」
「簡単だ。此方も見せつければやればいい」
「成る程、では写真に取りましょう」
名案を思い付いたお坊っちゃまの言葉を信じ、携帯電話の撮影モードを起動して、ゆっくりと迫り来るお坊っちゃまの艶やかな唇を受け止め、カシャリとシャッターを切る音が寝室に響き渡る。
「…んッ……送信しました…」
「で、返信は?」
「『助けろ』です。何故かしら?」
「フッ。流石は俺の宿敵だ」
私の呟きに笑みを浮かべたお坊っちゃまは優しく私の肩に腕を回し、そのまま窓枠に足を掛け、素早く飛び立つと「ニアデスハピネス」を起動して、私をお姫さま抱っこしながら空を舞う。
銀成市のお祭り会場まで飛ぶようです。
「蝶野!」
「糸色賛、貴様ぁ!!」
「チューは出来たのか?」
「うん、さっきね。二回目だけど」
「カズキも答えるな!」
団扇を突きつけて怒る津村斗貴子だけど。
普段の彼女の纏う気迫はなく、恥ずかしさによる照れ隠しだと分かるぐらいに顔は赤面し、口許を隠している。初々しくてとても可愛いです。
「武藤、お前が人間に戻った時こそ決戦だ」
「分かってる。今度こそ決着をつけよう」
そう言って笑う二人を私と津村斗貴子は眺める。こういうとき、男の友情に入り込める女の子はいないとは聞いていたけど。
やっぱり、本当なんですね。
「私とお前の決着はカズキ達の後だな」
「そうなりますね。まあ、そこから更にもっと長い長い延長戦になると思いますけどね」
「どういう意味だ?」
「私達、四人は親戚になりますし」
そう彼女の質問に答えたら空気が凍った。
変な事を言ってしまったかしら?
「「(そういえば
「あー、そっか」
「そうですよ」
ニコニコと笑う武藤カズキの言葉を肯定し、お互いに顔を見合わせて未来の親戚関係にげんなりしているお坊っちゃまと津村斗貴子を見て、その予想通りの反応にクスクスと笑ってしまう。