「わたあめ…」
「欲しいのか?」
「わたあめ…」
「そういえば子供の頃に来た時も綿菓子だったか」
お坊っちゃまに買っていただけたピンク色のふわふわしたわたあめをパクリと口の中に含めば、甘い砂糖の香りと味を舌先に感じ、ゆっくりと溶けるわたあめの美味しさに私は、ほうっと吐息を吐いてしまう。
わたあめ、とても美味しいです。
「お坊っちゃま、あーんです」
「……甘いが、賛の方が美味いな」
その言葉にざわつく人混みを掻き分けて、焼きそばやイカ焼きを食べている武藤カズキと津村斗貴子を見つけ、お坊っちゃまと子供の頃に一緒に花壇に腰掛けて食べていた事を思い出す。
あの頃は次郎くんも居て、三人でよく遊んでいたけど。何時からか、彼の眼差しに恋慕が混ざり始め、お坊っちゃまを疎ましく思うように変わり、気がつけば蝶野家の中で私とお坊っちゃまは孤立していた。
「賛、後悔しているか?」
「いいえ、私は後悔などしません。この心と身体は貴方のために生きると決めた日に、秋葉賛の全てを蝶野攻爵ただ一人だけに捧げると誓いました」
そう言ってお坊っちゃまに笑顔を向ける。
───だからこそ私はあなた様という世界が恋い焦がれ、美しく羽撃き、鮮やかに舞う蝶が、人知れずに羽を休める唯一の花で在りたい。
「お前の意志は変わらないな」
「そういう女なんですよ、私って♪︎」
「知っているさ。ずっと昔からな」
ようやくお坊っちゃまも普段の調子を取り戻し始め、武藤カズキと津村斗貴子のワイワイと騒がしくて楽しそうな痴話喧嘩に飛び込んでいく。
愛を知ると人は強くなる。
では、愛に溺れた私はどうなるのだろう。
どこまでも羽撃けるお坊っちゃまのためにしてあげたいことは沢山あるけど。やはり一番最初にしたいのは結婚でしょうか?
「糸色賛、また貴様か!?」
「私は何もしていませんよ」
「しかし、今回の夏祭りは騒々しいね」
「そりゃあそうだろう。此処彼処に錬金戦団にホムンクルスも混在する、こんな悪ふざけなら蝶・サイコーな祭りは此処ぐらいだからな」
その言葉に二人も周囲を見渡す。
「その射的の腕前はブラボーだ!」
「う、嬉しいですわ、ブラボー様♥」
そして、私としては大切な妹がキャプテン・ブラボーに恋慕の眼差しを向け、シルバースキンを解除した彼の事をチラチラと眺めている光景に何とも言えない気持ちになってしまいます。
無精髭も範囲に入っているのですね。
「二人が結婚したらブラボーも親戚だね」
「待て、戦士長は何歳だ?」
「……確かに奇ちゃんはまひろと同い年だからブラボーと結婚したら何歳差になるのかな?」
「愛に年齢も種族も性別も関係ありませんよ?」
「流石、賛さんの言葉は説得力がすごいや」
まあ、浮気したら許しませんけど。