お坊っちゃまの武装錬金「ニアデスハピネス」の背中に乗り、私はヘリコプターに搭乗している武藤カズキ達と共に第二のヴィクターを倒すため、ドクトル・バタフライ、そしてマスター・バタフライ様がすでに揃った海域に向かっている。
全身に強烈な気配が稲妻の如く駆け抜ける。
「ヴィクター!」
「武藤カズキか」
蛍火色の長髪を揺らすインディアン風の戦闘衣を纏ったヴィクター・パワードは水平に身体を倒し、極限までエネルギードレインを抑え込んだ状態で飛行している。いや、正確には彼の持つ武装錬金の特性を利用し、空気の流れを変えて移動しているのでしょうね。
「ドクトルの話は覚えているな」
「ああ、覚えている!」
「ならばお前が持て」
僅かな言葉を交わした後、白い核鉄が武藤カズキに投げ渡される。しかし、お坊っちゃま達の持つ従来の核鉄よりサイズは小さく、形状も少しイビツだ。
ドクトル・バタフライの持つ白い核鉄とは違う物とは違うと直ぐに分かり、驚きに表情を変える武藤カズキにヴィクター・パワードは微笑みを浮かべた
「アレキサンドリア、私の妻が今日のために作った急拵えの代物だが、お前の黒い核鉄の力を抑える程度には作用する筈だ。もしもの時はそれを使え」
「ありがとう、ヴィクター。それでも人間に戻るときは全員一緒に戻ろう。一人だけが助かるんじゃない、みんなで戻るんだ」
「フン、相変わらずの底抜けにお人好しの偽善者ぶりだな。だが、それでこそ武藤カズキだ!」
そう高らかに叫ぶお坊っちゃまの言葉は何処か歓喜を纏い、血反吐を吐くその口許をハンカチで拭き取りながら二人の決着に期待を昂らせるのは私だけではないはずだと思います。
「見えてきたぞ!先輩、武藤!」
「……なん、だ、あれは?」
「アレが二人目の黒い核鉄の……?」
中村剛太の叫び声を聞いた私達は視線を前に向け、余りにも現実離れした光景に驚愕してしまった。巨大ロボットと巨大な人が殴り合っている。
凄まじい殴打の応酬を眺める。
「オレのッ……邪魔を、するなアァァァッ!!!!」
空気が震動するほどに響き渡る叫び声。
「子供みたいな癇癪ですね」
「糸色賛、流石に言い過ぎだと思うぞ」
「そうですか?」
津村斗貴子の言葉に小首を傾げつつ、目の前で暴れ狂う彼を見つめる。左胸に刻まれた六角形の紋章と「II」のシリアルナンバー。やはり彼が二人目の黒い核鉄を宿した人間なのは事実ですね。
「武藤カズキ、行くぞ!」
「ああ、行こう!!」
ヴィクター・パワードと武藤カズキは真っ直ぐ巨大なロボットに向かっていき、二人の全力のエネルギードレインに身体が重圧を感じる。