ドクトル・バタフライとマスター・バタフライ様、ヴィクター・パワード、武藤カズキの四人を相手取りながら空中で壮絶な激闘を繰り広げる奈落の姿に竦み、恐怖を抱き始める声が聴こえる。
そうやって五十年前も彼を非難したのですね。
そんな武装錬金に頼って自分の強さを見誤って生きる錬金の戦士の醜態に溜め息を吐くお坊っちゃまに手を引かれて、人工島の地面に落ちることなく綺麗に着地し、小型犬サイズのスズメバチにビクリと身体が震える。
虫。
私の苦手な生き物の一種です。
ブブブブッ…!とスゴい羽音の聴こえる距離まで近付いてきたスズメバチに背中を向け、私は全力疾走してしまう。だって、本当に虫は苦手なんです。
「全くカエルも苦手で、虫も苦手か」
「お、お坊っちゃまは意地悪です」
私の背後で起こる爆発音と目の前に降り立つお坊っちゃまに少しだけ文句を伝えます。ここ数ヶ月ほど私の弱点をお坊っちゃまに知られ過ぎている気がします。
「甘ったるい感情だな」
「奈落の背中にいた鬼か」
「俺は悟心鬼、兄者の邪魔はさせねえ」
ごしんき。
先程の「甘ったるい感情」という言葉を考えるに、妖怪「さとり」と似たものなのでしょうか。いえ、それよりも私のお坊っちゃまに対する愛が彼には見えて聴こえているという事に?
その考えに至ると同時に鬼を見上げる。
「嗚呼、聴こえるぜ」
「言わないで下さいませ!」
「言うぞ」
グッと親指を突き立てて、ピコピコする彼の私の心を読んだ事に対する恥ずかしさに焦り、蛮竜を兎に角振り回しながら彼の事を攻撃します。
「ホウ。賛の隠したい感情を読めるのか」
「お止めください、お坊っちゃま!」
「よし。一つずつ言ってみろ」
「お坊っちゃまの破廉恥っ!!」
私はごしんぎではなくお坊っちゃまに突撃し、彼の耳を塞ぐために蛮竜を手放す。しかし、ホムンクルスのお坊っちゃま、空を飛ぶお坊っちゃまを捕まえることは出来ず、渋々と私は鬼に標的を戻す。
「お前の秘密を言ってやろう」
「賛の秘密か」
「お前は蝶野攻爵、そしてお前を愛している。クククッ、二人の男に恋心を抱くとは変わった女だ。パピヨンとかいうホムンクルス、残念だったな」
ごしんきの言葉に私は顔を覆い隠します。
こんなところで私がお坊っちゃまを愛していることが他の人にバレてしまうなんて恥ずかしすぎます。ごしんき、絶対に許しません!
「ごしんき、一つ教えてやろう。その蝶野攻爵はかつての俺であり、今は『蝶人』パピヨンを名乗る俺こそが賛の仕えるべき主人だ!!」
その言葉と共に大量の蝶が現れ、人工島の一部が粉々に爆発していく。私に爆風や残骸が当たらないように、黒色火薬の壁で守ってくれたお坊っちゃまを見上げると楽しそうに笑っていました。