【本編完結】黒死の蝶の唯一留まる花   作:SUN'S

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蛍火を散らす 序

「奈落ウゥゥーーーーッ!!!」

 

「吠えるな、小僧!」

 

私の頭上で激しく迸り、エネルギーを放出する突撃槍を振るう武藤カズキと無数の触手腕と前腕の皮膚を突き破って隆起した鉤爪を薙ぐ奈落の姿を見上げる。

 

「下がれ、武藤カズキ!」

 

「ぬぐうっ?!!」

 

「───友よ、再び母なる大海の底に沈み、今度こそ闇に囚われず夢現の中で静かに眠れ!『フェイタルアトラクション』ッ!!」

 

刹那、大戦斧を振りかぶって二人の間を切り裂くヴィクター・パワードの一撃と彼の武装錬金「フェイタルアトラクション」の特性『重力操作』によって奈落の身体は海面に叩き落とされ、海面が陥没するように深々と海底まで見えるほどに沈み、奈落の身体を張り付けにする。

 

その一撃の影響によって人工島(メガフロート)の一部が焼失し、確実にダメージを与えている事が分かる。黒い核鉄を摘出するまであと少しですね。

 

しかし、大海を這い上がるように山のごとき触手がのし掛かる重力の重さに逆らって盛り上がり、その中心部に鬼面の様に顔は変容し、黒い髪が逆立った白髪に染まり始める姿に奈落は変わる。

 

「私は負けぬッ…!」

 

「グッ、グウウォオオォオオオォオッ!!?」

 

「ヴィクター、能力を解除しろ!!」

 

武藤カズキがヴィクター・パワードの身体を足場に、エネルギーを放出して奈落の間合いから彼の巨体を弾き、そのまま触手を纏う奈落の身体に、もしものときのために渡されていた白い核鉄の予備を叩き込んだ。

 

「奈落の身体が肌色に戻った」

 

「勝てる、勝てるぞ!」

 

錬金戦団の声が聴こえ、奈落の武装錬金「サイケデリックリゾート」の島民を倒すたたかいが更に苛烈を増していき、より強く相手を倒すために闘争本能を昂らせ、荒々しく攻撃を加えていく。

 

「貴様等に容易く踏み荒らせるほど『サイケデリックリゾート』の真価はこの程度ではない!来い、万夫不当の兵たちよ!!」

 

───絶望が、現実を侵食した。

 

「飛べ、賛っ!!」

 

「はいっ!!」

 

お坊っちゃまの声に従って空に跳び上がった瞬間、先程まで私の立っていた場所に無数の、百体を越える自動人形(オートマータ)の素体が現れ、一気呵成の進撃を進めていた錬金戦団の戦士に姿形が変身する。

 

戦況が覆される。

 

「成る程、おじいちゃん達が最強の武装錬金と認めるわけだ。妖怪の無尽蔵のスタミナと無尽蔵の兵士を生み出せる黒い核鉄が、ここまで蝶・パーフェクトに噛み合えば正しく敵無しの強さだ」

 

「やはり所有者を倒すしかありませんね」

 

「ああ、そうしてやりたいところだが」

 

私を抱き上げるお坊っちゃまの視線の先に普通の槍を構える私と黒色火薬の羽を持たないお坊っちゃまが佇んでいるのが見えた。

 

相手の姿を写し取ってしまう能力とは、これほどまでに脅威となるのですね。しかし、神楽と一緒にいた白い女の子は何処に消えたのでしょう。

 

彼女の能力と考えるべきですが。

 

 

 

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