戦国時代を生きた大妖怪「奈落」の復活に際して人々の中に紛れていた妖怪達は活発化し、人を襲う者、人を護る者、ホムンクルスと殺し合う者が現れ始めた。
ヴィクター・パワードと武藤カズキの二人は黒い核鉄の進行を止めるために白い核鉄を体内に取り込み、完全な人間に戻ることには成功したものの。
やはり大妖怪と渡り合える手段はヴィクター化によってエネルギードレインを行い、弱りきったとかろを攻撃するべきなのでしょう。
しかし、ドクトル・バタフライは干からびた奈落(此方は二代目)の身体を修復フラスコに収監し、完全回復するまで退出する事の出来ない檻の中に封じ込めているけれど。錬金戦団の戦士や上層部の反感は酷いものです。
「お坊っちゃま、世界はどうなるのでしょうね」
「さあな。少なくとも人間に戻った武藤と決着をつけるには奈落の存在は邪魔だ。だが、ヤツはお前の蛮竜に殺意を示していた」
「えぇ、確か
「婚前挨拶は大事だ。よし、俺も行こう」
そうお坊っちゃまと話していると武藤カズキと津村斗貴子の二人が私達のお借りしている錬金戦団の医務室に入室してきた。何かしら進展があったのでしょうか?と小首を傾げつつ、二人に椅子を引いて差し出す。
「糸色、パピヨン、お前達に話がある」
「賛さん、オレに蛮竜を貸してくれないか?」
武藤カズキの言葉に僅かに怒気が溢れ、津村斗貴子のバルキリースカートが私の身体を取り囲むように出現するのも無視して椅子に座ったまま私を見上げる武藤カズキを静かに見つめ返す。
「その言葉の意味、分かっているのですか?」
「オレもお爺ちゃんに電話で聞いたよ、蛮竜を振るうのは糸色本家の後継者に名乗り出る事だって。親戚全員の中で、蛮竜を自在に使える賛さんが一番の当主候補なのも知っている」
「───ならば、この蛮竜を握りなさい。そして、蛮竜に刻まれた戦歴を体験して来なさい。津村さんも武藤カズキと添い遂げるのなら共に掴みなさい」
壁に立て掛けていた蛮竜を掴み、武藤カズキと津村斗貴子に手渡した瞬間、二人の意識は蛮竜の中に取り込まれていく。
「相変わらず原理不明の光景だな」
「妖刀や霊槍はこういうものですよ」
そう言って私はお坊っちゃまのティーカップに紅茶を注ぎ、武藤カズキが蛮竜に選ばれるかどうかを静かに見守ることにします。
上手く行けば初代様に会える筈ですけど。