しかし、武藤カズキと津村斗貴子は中々帰って来ませんね。私は5歳の時に戦歴を体験した際はすぐに戻って来れたのに何故でしょうか。
「?お坊っちゃま、奇が不貞腐れているのですが」
「ああ、例のコートには交際している相手が居たらしくてな。あっさりと失恋してしまっただけだ。あの年齢の男に交際する相手がいないと本気で思っていたことに俺は驚きを隠せんがな」
「……パピヨンお兄様、シャラップ……」
確かに考えれば直ぐに分かることですね。
しかし、奇は去年まで中学生。それも閉鎖的な女子中学校からニュートンアップル女学院という男性と知り合う機会の少ない生活を送っていた訳ですので、素直に言えば殿方に幻想を抱いています。
「奇、彼方の殿方はどうです?」
「あ゛ァ゛ん?」
火の付いた煙草を咥えた荒々しく燃え盛る烈火のごとき雰囲気と覇気を纏う男性。キャプテン・ブラボーと親しくしていた戦士長・火渡と呼ばれていた人です。
どこか放っておけない雰囲気を纏っている彼に懐かしさを感じるのは何故なのか。遺伝子に刻まれるほどに誰かに似た気配を感じます。
「賛、浮気は許さないぞ」
「私はお坊っちゃま一筋でございます♪︎」
「オイ。今俺を当て馬にしたか?」
「申し訳御座いません。お姉様とパピヨンお兄様は所構わずにストロベリってしまうバカップルなんですの。えっと、火渡戦士長様?」
「……お前もグイグイ来るな」
「ひ、火渡様に近付かないで!」
キャプテン・ブラボーとの失恋をあっさりと乗り越えた奇は火渡様の近くに着席し、先程までネガティブになっていたとは思えないほどキラキラした眼差しを彼に向け、ガスマスクの女の子に威嚇されています。
「ん。戻ってきましたね」
くるりと医務室に視線を向けると肉体はそのままですが、動きに繊細さが増し、歩み方もかなり良くなった二人に近付き、二重の極みを繰り出す。
───刹那、二重の極みが弾かれ、突撃槍と処刑鎌が私を地面に押し倒していた。かなり良いです、私の時よりも深く潜り込めたようですね。
「お二人は誰と戦ったんですか?」
「オレは相楽左之助って人だけど」
「糸色姿、二度とあんなヤツと戦うかッ」
糸色本家の家系図に於いて特異点たる高祖父と、明治最強の一角と謳われた剣客の糸色姿を引き当ててしまうとは流石にビックリです。
しかし、彼らと戦っていたのなら納得の強さです。
「あっ。あと賛さんに似た感じのお姉さんと話したんだけど。あの人がひょっとしてオレとまひろ、賛さんのひいひいおばあちゃん?」
「糸色景さんですね」
私より引きが良いのではないでしょうか?
次回はカズキ君の継承権を巡る過去編になります。
つまり、時を越える邂逅ですね。