明治剣客浪譚に遡る 序
一瞬、時代を遡る様に景色が変わっていたけど。
これも蛮竜の影響なのかと握り締めていた筈の蛮竜が消えていることに気づき、慌てて周囲を見渡すも蛮竜は何処にも見当たらない。
……帰る手段が分からないヤツでは?
「トリックや催眠術の類いじゃないな。カズキ、手分けして調べるのは止めておこう。まずは情報収集と拠点になる場所を探そ……蛮竜はどうした?」
「いつの間にか無くなってた。多分、この時代を生きている持ち主のところにあるんだと思うけど。最初に探すのは大鉾を持った人だ」
「あのデカブツだからな。見つかるのも早い」
怒られるかと思ったものの。意外とあっさり納得してくれた斗貴子さんとはぐれないように手を握り締め、着物を着た人達の間を通って歩く。
日本なのは間違いないんだろうけど。日本の何処に飛ばされたのかが分からないんじゃ蛮竜の継承権の手懸かりも得られないままだ。
「ニシン漁、明治時代か?」
「えっ、そんな直ぐに分かるの!?」
「糸色のヤツと戦うためにデータを探っていたときな。それに短期間だが君達のご先祖様は北海道で何か事件に関わっていたという話も残っている」
恐るべし、錬金戦団の情報網…!
「しかし、ここが北海道なら蛮竜の使い手を見つけるのに何ヵ月、何年掛かるかも分からないぞ」
「いや、何となく分かるよ」
斗貴子さんの呟きを遮るように応える。
そう、何となく分かるんだ。
心臓の代わりになっている黒い核鉄が鼓動する度、何かと共鳴するように激しく大きく鳴動し、オレを蛮竜のところまで導いてくれる。
そんな気がするんだ。
「……カズキ、大丈夫か?」
「うん。平気だよ、斗貴子さん。それに明治時代なら『うしおととら』を書いていたご先祖様に会えるかもしれないからね!」
「全く君は本当に仕方ないな」
そう言って呆れる斗貴子さんもソワソワしているので、やっぱり原作者に会えるかもしれないという事に期待している様子だ。
「糸色、賛…?いや、あんなに穏やかに笑う感じじゃないし、アイツの髪は癖毛じゃなくてストレートヘアーだったはずだが」
「身長も低いし」
オレと斗貴子さんの会話が聞こえてしまったのか。彼女が後ろに振り返った瞬間、彼女と手を繋ぐ子供の姿に驚き、思わず叫びそうになる。
な、なんとか耐えられた。
「……武藤カズキと津村斗貴子?」
「「──────ッッッ!!!!?」」
なんで、オレ達の名前を知っているんだ。
いや、そういえばドクトルがひいひいおばあちゃんは未来を見通す超能力みたいなのを持っていたとか言っていたけど。まさか本当に過去の人がオレ達の事を見ただけで、未来を見通したのか!?