いつの間にかオレ達は彼女の暮らしているという北海道の借家に来てしまったけど。明らかに現代風の一軒家に斗貴子さんは唖然とし、自分より小柄な女の人が人妻な事実に混乱している。
この時代だと結婚適齢期は低かったって聞いたことあるけど。ひょっとしてひいひいおばあちゃんもオレ達と同い年くらいなのかな?
一応、子孫なのは隠しているけど。
「紅茶とコーヒー、どちらが良いですか?」
「こ、コーヒーを」
「私も同じで良い」
彼女のテキパキとした後ろ姿を眺めていると小さな女の子がオレと斗貴子さんを、ジーーーッと食い入るように見上げていることに気付いた。
この子が、ひいおばあちゃんになるのかな?
「ん!」
「わっ、とと…!」
いきなり飛び付いてきた女の子を受け止めきれず、斗貴子さんを巻き込んで畳に倒れ込み、フンスと胸を張っている彼女の自信満々な顔に思わず、張り詰めていた緊張が解けて笑ってしまう。
「どうぞ」
「ああ、ありがとうございます」
「……さて、先ずは何を聞きましょうか」
オレと斗貴子さんの前、机を挟んで対面側に座った糸色景は湯呑みに淹れた緑茶を一口飲み、そう呟いてオレの事を静かに見つめている。
この人はもうオレの目的を分かっているんだ。
ドクトルの話に出ていた「未来を見通す超能力」の能力で瞬時にオレ達を調べきった可能性もあるけど。彼女はオレ達が話すのを静かに待ってくれている。
「初めまして、もう知っているかもしれないけど。オレは武藤カズキで、この人は津村斗貴子さんって言うオレの大切な女性です」
「その情報は与えんで良い!!……コホン、カズキに紹介されたが津村斗貴子だ。いきなりの押し掛け訪問は申し訳ないが此方も一瞬一秒を争う事態だ、蛮竜の遣い手に会わせて貰えないだろうか?」
「左之助さんならそちらですよ」
率直な斗貴子さんの申し出にひいひいおばあちゃんは悩むそぶりを見せず、スッと左手を隣の部屋に向けて指差した。この襖の向こう側に蛮竜の遣い手が?
こんなに早く出会える運の良さに腰溜めでガッツポーズを取りながら襖を開けると剣呑な雰囲気の男達が地図を取り囲んで話していた。
「…………」
そうっと襖を閉めて斗貴子さんを見つめる。
「さっさと行け」
「……斗貴子さんが冷たい」
しょんぼりとしながら襖を開けると目付きが明らかにヤバい人達がほぼ至近距離に立っていた。慌てて襖を閉めようとしたら頭を鷲掴みされた。
「景、コイツら誰だ?」
「武藤カズキ君と津村斗貴子さんです。そうですね、ドクトルの知り合いと言えばいいんでしょうか。ただ、二人は左之助さんに用事みたいだそうです」
「ホウ?」
あっ、これはヤバいヤツだ。